『電池のないEV』:低炭素化都市に逆行するキャパシタ

日経ビジネスオンラインには、ちょくちょく奇怪な記事が載るので面白い。
「『電池のないEV』がなぜ走る?【交通編4】発送の大転換、ちょこちょこ充電するクルマが拓く大きな未来」(日経ビジネスオンライン2010/08/06掲載記事)
「キャパシタ」というワイヤレス給電が可能な新しい充電池をもつクルマを、市街地の短距離で低速な「新交通システム」として、東京大学新領域創成学研究科・堀洋一教授の研究チームが、実用化に向けて研究中という記事だ。
しかし、そもそもクルマとは、米国のように鉄道の未発達な広大な都市で、長距離を高速に移動する個人用の交通手段として使われ始めたものだ。
日本やヨーロッパのように、コンパクトな都市内部の交通手段としては根本的に不向きである。
だからこそ最近のヨーロッパでは「新交通システム」として、短距離で低速な大量輸送のために路面電車が導入され、都心にはクルマを乗り入れさせない都市設計が進められている。
上記の記事の中で、奇しくも堀教授は次のように語っている。
「ほとんどの電車は、車両単体での航続可能距離はゼロkm。それでも走っているのは、架線からエネルギーを供給し続けているからだ。ガソリン車はタンクを積んで、時々、給油しなければならないが、電気自動車なら電車のようなエネルギー供給ができる」
そのとおり。だから日本の大都市の都心も、欧州型の路面電車や電気自動車バスを導入して初めて、都市全体で総量として「低炭素化」が実現できる。
ところが堀教授の目指しているものは、ちょこちょこ充電する個人向け自動車が、今までのガソリン自動車の代わりに大量に走って渋滞を起こし、かつ、街のいたるところでワイヤレス充電をしているような都市像だ。
これが、都市内部における電気による短距離・低速な大量輸送(路面電車や電気自動車バス)の正反対をいっていて、確かにガソリンの消費は減るかもしれないが、逆に都心部における電気の利用を増やすだけで、総量として「低炭素化」にならないのは明らか。
総量として、都市部におけるエネルギーの利用量を減らすには、個人向けの交通手段を排除する、根本的な都市設計の変更が求められている。だからこそヨーロッパの路面電車は「低炭素化」施策として意味があるのだ。
要素技術の開発に走ると、全体像が見えなくなる。「木を見て森を見ない」典型的な技術開発事例と言える。