TBS『Nスタ』「ニセモノ天国、中国」のニュースで感じた2つの疑問

今日、夕方のTBS(MBS)のニュース『Nスタ』で、また北京モーターショーの映像を映して、中国はニセモノ天国だという話題を取り上げていた。それを見て疑問に思ったことが2つある。

(1)偽物がなくならないのは経済格差が根本原因
まず1つめ。中国大陸でなかなか偽物を撲滅できないのは、当たり前だが偽物が安くてよく売れるからだ。
「SONY」ならぬ「SQNY」製の電池を買う中国人は、それが日本のソニー製の本物であることを知っているかどうかに関わらず、安いから買う、それだけのことだ。
もちろん偽物を製造するメーカー側にも責任はあるが、たとえ偽物で品質が悪いと分かっていても、分かっていなくても、本物の価格を見て、それを買う経済力がなければ、偽物を選ばざるをえない。
中国大陸で本当に偽物を撲滅しようと思えば、残念ながら偽物のメーカーをいくら摘発してもイタチごっこになるだけで、沿岸部と内陸部の経済格差、そして、各大都市の内部でも、富裕層と農村からの出稼ぎ労働者など貧困層の経済格差を解消しないことには、決して偽物はなくならないだろう。
この種の「中国は偽物天国」的なニュースは、いつもただ単に「この車はベンツとそっくりですね~」などと、偽物を並べ上げるだけに終わっている。
しかし、中国国内の経済格差を原因とする、根強い偽物需要があるからこそ、偽物がなくならないのだ、という点まで踏み込まないと、全く非生産的な、ただの中国叩きに終わってしまう。
偽物天国だと言って、いくら中国を叩いても、日本経済にとって何の利益もないということが分からないのだろうか。
こういう報道をくり返せば、当然、視聴者である日本人の、中国に対する印象を悪化させる。
すると、せっかく政府が中国人に対する観光ビザの発行条件を緩和し、より多くの中国人観光客に来日してもらい、日本にお金を落としてもらおうとしているのに、中国人を歓迎しようという雰囲気がぶち壊しになる。
その結果、日本の観光立国の側面が成立しなくなり、日本経済にとって明らかに損失だ。
また、中国国内の経済格差批判まで踏み込んで報道すれば、一種の「外圧」として、偽物撲滅キャンペーンの形を借りて、中国政府に経済格差の是正を促すことができる。
その結果、日本製の本物を購入してくれる富裕層が増えるかもしれないのに、わざわざそのチャンスをつぶしている。これも日本経済にとって明らかに損失だ。
「ニセモノ天国、中国」という浅はかな報道は、日本経済にとって端的に損なのだ。
(2)日産自動車の広報の明らかな失態
次に2つめ。番組中で中国製の偽物の例として、「ふくらまないエアバッグ」が登場した。それは日産のエンブレムの着いたハンドルだった。
日産の広報は、いったい何を考えているのだろうか。
今日のニュースを見た視聴者の中には、日産製の自動車の中には、「ふくらまないエアバッグ」を組み込んだ製品が紛れ込んでいると勘違いした人が、何パーセントかいるに違いない。
当然、日産自動車は中国の部品メーカーから輸入した部品を、検品してから組み立てているだろうから、「ふくらまないエアバッグ」付きの日産自動車製の車が売られているはずはない。
しかし、たぶん経産省だと思うが、中国製の偽物サンプルとして、自社の協力工場が製造した偽物エアバッグ部品を提供し、エンブレムにモザイクもかけず、ニュースで放送することを許可すれば、日産自動車の購買戦略や品質管理体制に疑問を持たれかねない。
例えば、なぜ日産自動車は、そんな「ふくらまないエアバッグ」を製造するような部品メーカーを選定したのか。製造コストを削減せよと、経営層がむちゃな圧力をかけ、購買部門に誤った業者選定をさせたのではないか。
あるいは、業者選定の際に、事前に部品メーカーの経営体質をチェックしなかったのか。部品が仕上がって輸入した段階で、初めて偽物と分かったのだとすれば、日産自動車の品質管理はあまりにお粗末ではないか、などなど。
まともな経営感覚をもった視聴者、つまり、日産自動車の大型乗用車の購買層に、そのような誤解を与えかねない「ふくらまないエアバッグ」を、なぜニュースに露出させたのか。日産自動車の広報はお粗末としか言いようがない。
以上が、中国はニセモノ天国という、もう見飽きたニュースを見て、疑問に思った2つのことだ。