ビクターエンタテインメントの経営はやや甘いのでは?

JVC・ケンウッド・ホールディングス(以下JVC)が音楽部門の買収に2度失敗したのはご承知のとおり。2009/11にはコナミに、2010/4にはソフトバンクに買収しようとして交渉打ち切りになった。
その結果、音楽部門のビクターエンタテインメントでは人件費を含む経費削減が行われたことは想像に難くない。
JVCの平成22年3月期の決算短信「次期見通し」部分を読んでも、エンタテインメント事業の「エ」の字も出てこない。利益が回復しつつあるカーエレクトロニクス事業と業務用システム事業を今後の収益基盤とすると明記されている。
また「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」には、ビクターエンタテインメントの苦しい台所事情をうかがわせることが、さらりと書かれてある。
「2)管理楽曲に係る使用許諾契約に基づく収益計上基準」が変更されているのだ。
これまで、ビクターエンタテインメントの管理楽曲の売上は、使用許諾期間に配分して計上されていたが、それを今決算から、使用許諾の契約時点で、一括計上するように変更した。それによって、当年度の売上高が123百万円増加したとある。
要は、会計方針の変更を迫られるほど、ビクターエンタテインメントの台所事情は厳しいということだ。
ここまで来ると、ビクターエンタテインメント所属歌手のスタッフが、経費削減のためにリストラされている可能性も十分考えられる。
ただ、同社所属のアーティストが、会社の苦しい台所事情をどこまで理解しているかは疑問だ。
同社所属の某アーティストが2010/07/07発売予定だった、ライブDVDの発売を2週間延期したらしい。
このアーティストが同社の売上全体に占める割合は、かなり少ないと思われる。それでも商品の発売延期は、企業にとってDVD制作のために投資した資金の回収を遅らせ、2週間いたずらに眠らせることになる。
たった2週間の延期で、DVDの映像や音源の再編集までできるはずがないので、おそらくジャケットなど装丁の細かな変更が理由と思われる。
アーティストとして自分の作品に完璧を期すのは尊敬すべき態度だ。
しかし、商業音楽をやっている身として、所属会社の経営状況も考えず、装丁の変更ていどの理由で、会社の資金回収を2週間も遅らせるのは、商業音楽家としては失格だ。
また、アーティストのそんな「わがまま」を許してしまうからこそ、ビクターエンタテインメントは苦境に追い込まるのであって、自分で自分の首を絞めているようなものだ。
アーティストとそのファンたちが、望むと望まないとに関わらず、音楽CDやDVDの売上は下降の一途をたどり、ダウンロード市場さえ違法ダウンロードのまん延で縮小し続けている。
商業音楽の世界で生きている限り、予定日に商品を発売し、会社の資金回収に迷惑をかけないようにするのは、会社の経営陣にとっても、一人の社会人であるアーティストにとっても、常識だと思うのだが。
一般の民間企業に勤務している一人の会社員として、これほど簡単に商品の発売日を延期してしまう「軽さ」には、強い違和感をおぼえる。