口蹄疫問題:政府に頼らず封じ込めに成功した、えびの市

宮崎県の口蹄疫問題。「ここまで感染が拡大したのは、政府の初動が遅かったせいだ」というのがウソである証拠が、もう一つあるようだ。今朝のNHKニュースで知った。
それは宮崎県えびの市が、今のところ口蹄疫の封じ込めに成功している事実だ。
宮崎県での時系列での口蹄疫発生事例は、先日来ご紹介している農水省の下記PDFファイルで確認できる。
「宮崎県における口蹄疫の発生事例の防疫措置の状況」
また宮崎県ウェブサイトの下記のページでも確認できる。
「口蹄疫に関する情報提供>これまでのプレスリリース」
これら資料によれば、えびの市で最初の発生事例は通算9例目、2010/04/28の肉用牛275頭。
それまで沿岸部の都農町、川南町に限られていた感染が、突然、えびの市に飛び火したことを、東国原知事も県の防疫対策本部会議で重くうけとめている。
「口蹄疫えびのに飛び火 知事、防疫徹底を指示」(九州読売新聞 2010/04/29)
この後、川南町とえびの市の口蹄疫の拡大は、対照的な展開を見せる。
川南町が豚への感染拡大をきっかけに、爆発的に口蹄疫が広がった。
対して、えびの市では、22例目の豚320頭(2010/05/05)、68例目の肉用牛29頭(2010/05/11)、83例目の肉用牛46頭(2010/05/13)、これを最後に感染拡大の阻止に成功している。
今朝のNHKニュースによれば、これはえびの市長が「家畜伝染病予防法」にもとづき、市長独自の権限で予算も確保し、徹底的な感染拡大措置を講じたからとのことだ。
わかりやすく言えば、えびの市長と市民の皆さんは、政府に泣きつくことなく、何と自力で口蹄疫の拡大を食い止めることに成功したのである。
えびの市が口蹄疫拡大に成功した2010/05/13、東国原知事は残念なことに、えびの市の努力と正反対のことをしでかしている。
口蹄疫の拡大阻止よりも、「宮崎牛」ブランドの死守を優先し、「家畜伝染病予防法」の例外措置を政府に無理やり押し通して、「宮崎牛」の種牛を西都市に移動させてしまった。
そのせいで、8日後の2010/05/21、西都市の肉用牛で口蹄疫の感染が確認され、以降、西都市の肉用牛にも口蹄疫を拡散させてしまった。西都市では、2010/05/23にも肉用牛165頭の感染が確認されている。
ところが2010/05/13、東国原知事が「家畜伝染病予防法」に反して種牛を移動する例外措置を、政府に無理やり認めさせた事実について、マスコミはとんでもない偏向報道し始める。
つまり、「政府が『宮崎牛』の種牛の避難を許可せず、宮崎県の畜産業をつぶそうとした」という報道だ。
これ以降、マスコミの報道は、「宮崎県は政府の被害者」という図式の報道を始めることになる。
ひとつの典型は下記の読売新聞の報道である。
「早く具体策を!国の口蹄疫対処方針に農家怒り」(読売新聞 2010/05/18)
この記事で読売新聞は、えびの市の畜産農家Nさんが、政府の対処方針が抽象的で、「ただ担当者が来るだけでは意味がない。言葉だけでなく具体策を示して実行し、一刻も早く安心させてほしい」と訴えた、と報じている。
しかし、これは上述のNHKのニュースや、事実としてえびの市が口蹄疫の拡大阻止に、宮崎県で唯一成功していることと矛盾する。
この2010/05/18付の読売新聞の記事が出たころ、上述のようにえびの市は自助努力で、すでに口蹄疫の拡大阻止に成功していたのだ。
たしかに畜産農家Nさんにとって、えびの市長の指示にもとづく、読売新聞の報道にある下記のような措置は、精神的に耐えがたいものだったに違いない。
「自宅の敷地に、家族以外は立ち入らないよう注意する看板を立て、隣家とのやり取りも電話で済ませるなど可能な限り人との接触を避けている。毎日数回、牛舎などへ消石灰をまき、起床後はすぐに、牛の体調や食べた餌の量を確認するのが日課になった」(同上の読売新聞 2010/05/18記事より引用)
しかし、えびの市は「家畜伝染病予防法」にしたがって、市長権限でこのように畜産農家のみなさんに、耐えがたい苦痛を強いるような措置を断行した。
それも、政府に頼ることなく、対策を徹底的、かつ、継続して断行したおかげで、2010/05/13以降、感染を1例も出さず、口蹄疫の封じ込めに成功したのである。
素朴な疑問がある。
えびの市では、2010/04/29の最初の口蹄疫発生からすでに、政府に頼らず、法律に定められた市町村長の権限で、徹底した措置を講じることで、封じ込めに成功した。(もちろんその代償として、畜産農家のみなさんに耐えがたい苦痛を強いることになったが)
では、なぜ同じ措置が、川南町などの沿岸部で実施できなかったのだろうか。また、実施できなかったことが、なぜ政府の責任になるのだろうか。
政府を非難することが、畜産農家の皆さんのやり場の無い怒りのはけ口になるのは、ある程度やむを得ない。しかし、口蹄疫拡大の責任まで政府に転嫁するのは、東国原知事の無責任さ以外の何ものでもない。

口蹄疫問題:政府に頼らず封じ込めに成功した、えびの市」への2件のフィードバック

  1. ケノーベル エージェント

    ケノーベルからリンクのご案内(2010/05/29 09:46)

    えびの市エージェント:貴殿の記事ダイジェストをGoogle Earth(TM)とGoogle Map(TM)のエージェントに掲載いたしました。訪問をお待ちしています。

  2. TWO 2 SIXTY

    口蹄疫問題でもテレビ報道はあいかわらず。ここまでくると時報も鵜呑みにはできない。

    テレビ報道がジャーナリズムと呼ぶに値しないとか今さらいうつもりもないが、それにしても今回の口蹄疫報道には呆れた。

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