郷原信郎氏の記事「検察の『暴発』はあるのか」(日経ビジネスオンライン)

小沢一郎氏の政治資金問題について、『日経ビジネスオンライン』に元検事・郷原信郎氏の記事が出ていた。長いので論点を要約する。
日経ビジネスオンライン:「検察の『暴発』はあるのか(上)」郷原信郎が読み解く陸山会政治資金問題の本質
(1)政治資金規正法そのものの不備
そもそも、政治資金についての法律は、企業会計や税会計の法律と異なり、基本原則も細かいルールも整備されておらず、法律として不備がある。
(2)政治資金収支報告書についての世間の誤解
政治資金収支報告書に記載が求められているのは、政治団体の銀行口座、現金の入出金すべてではない。
ご存知のように、企業の決算報告書には、すべての口座の入出金明細を記載する必要はない。当たり前の話だ。
政治資金収支報告書も、今の政治資金規正法では、同じように、口座の入出金明細をすべて記載する必要はない。
ところが、今回、石川議員が逮捕されたのは、入出金明細を一部、書き漏らしていたためである。
逆に言えば、検察は、政治資金規正法を「勝手に」解釈して、政治資金収支報告書には入出金明細を全件記載しなければならない、としたことになる。
しかも検察は、入出金明細のどの明細を書き漏らしていたのか、具体的に特定しないまま、現職の与党国会議員である石川議員を逮捕したのだ。
この話を、民間企業に当てはめてみよう。
あなたが、ある会社の社長だとする。ある年度の損益計算書で、売上高と仕入高の金額が虚偽であることがわかった。
経理担当者の単なるミスか、経理システムの不具合の可能性が高いが、もちろん粉飾決算の疑いもある。いずれにせよ、まだ虚偽の原因は特定できていない。
ところがあなたの会社は、この段階で、いきなり検察に強制捜査され、あなた自身は商法の特別背任罪の容疑で逮捕、勾留される。そしてあなたの自宅も強制捜査される。
そのせいで、あなたの会社は社会的信用を失い、業績は大幅に悪化、倒産の危機をむかえる…。
今回の石川議員の逮捕は、それくらいムチャクチャな出来事なのだ。このムチャクチャさ加減が分からない会社員の方は、会社員を辞めた方がいい。
僕は、小沢氏が白だと言いたいのではない。
まず、与野党にかかわらず、国会は立法府として、政治資金規正法の完成度を高め、民間企業に適用される企業会計原則や、商法、税法と同じレベルにすることに、国会の貴重な時間(=国民の税金)をつかうべきだ。
鳩山首相の相続税未納は、検察でさえ立件しなかったのに、野党はそれを追及するのに国会や予算委員会の時間をムダづかいすべきでない。
次に、容疑を具体的に特定しないまま、検察が石川議員を逮捕したのは、明らかに権限の濫用である。
検察は、小沢氏が黒だという確信があったなら、石川議員の勾留満期である2月4日までにその証拠を集められるはずだし、集めるべきである。(検察の捜査にも国民の税金が使われている)
しかし実際には、1月133日以降、ありとあらゆる場所を強制捜査したにもかかわらず、東京地検はいまだに決定的な証拠をつかんでいない。
こういう事態を、検察の「勇み足」と呼ぶのはおかしいだろうか。
証拠隠滅の疑いがあるという理由で、無実かもしれない現職国会議員の身柄を勾留しておいて、勾留期限までに証拠を集められませんでした。
そんな言い訳が通用するなら、東京地検とはずいぶんお気楽な組織だ、と言わざるを得ない。
過去に検察はロッキード事件やライブドア事件でも、同じような勇み足をやっているが、そのことをマスコミは全く報道しないし、世論も全く問題にしない。
逮捕イコール有罪。大部分の日本人は、いまだに江戸時代を生きている。
そういうわけで、この「愛と苦悩の日記」の記事は、例によって日本人の民度の低さを嘆いて、おしまい。
小沢氏は検察より一枚も二枚も上手なので、あとは「勇み足」をしてしまった検察のメンツを立てて、小沢氏が検察とどう「手打ち」するか。残る関心事はそれだけ。
与野党の議員は、今回のような問題がそもそも起こらないように、政治資金規正法の完成度を高める審議をすべきだ。
しかし、政治資金規正法の完成度を高めると、自分の痛い腹をさぐられる議員が山ほどいるので、審議は進まないだろうけれど。