『思想地図 vol.2』上野千鶴子インタビューが痛快!

『思想地図 vol.2 特集・ジェネレーション』(NHKブックス別巻、編集:東浩紀・北田暁大)をずいぶん前に買っていたのだが、病気で知的な集中力がなくなり、しばらく読めなかった。ようやく読み終わろうとしている。

いちばん面白いのは上野千鶴子(東京大学大学院社会系研究科教授)インタビュー「世代間対立という罠」。聞き手は北田暁大(東京大学大学院情報学環准教授)。
上野千鶴子氏はいつもながら明快で鋭いな回答で、聞き手の北田暁大氏をたじたじにさせている。一言でいえば「団塊ジュニアよ甘えるな!」で、東浩紀や北田暁大など、団塊ジュニアの立論が完全に粉砕されていて、小気味いい。
濱野智史氏の「ニコニコ動画の生成力―メタデータが可能にする新たな創造性」は、議論がミニマルすぎて、ほぼこじつけ。
ニコニコ動画には、元ネタを加工した創作を、さらに加工した二次創作を、さらに加工したN次創作が大量に存在するのに、YouTubeにはN次創作が少ない。
その理由について濱野智史氏は、ニコニコ動画では1つの動画につけられるタグの数が10個に限られており、ときにその10個の枠を利用者がチャットのようにリアルタイムで、次々に内容を変更していく。
それが傍観者としての利用者から見ると、同一の動画に、異なるタグが付いている、つまり、異なる分類がされているように見える。
そのため、本来、タグは、動画を分類・整理することで情報の複雑性を減らす役目をもっているのに、ニコニコ動画では分類を発散させる役目を持つ。
濱野智史氏の議論は、そのことが、N次創作を誘発する基盤(アーキテクチャ)として機能している、という内容だが、まあこじつけもいいところだ。
YouTubeにN次創作が少なく、ニコニコ動画にN次創作が大量にある理由は、一言で説明できる。
もともと同人誌がN次創作であり、ニコニコ動画のヘビーユーザーの大きな部分を、同人誌の制作者や購入者であるアニメ・漫画のコアなファンが占めている。それだけのことだ。
要するに、ニコニコ動画はアニメやコミックの主人公を借用した、パロディ漫画や小説からなる同人誌の、N次創作の伝統を受け継いでいるだけのことだ。
なので濱野智史氏の論文は無視していいが、上野千鶴子のインタビューは痛快なので、これを読むだけでもこの『思想地図 vol.2』を買う価値はある。