鬼束ちひろインタビュー『BARFOUT!』2007/11号批評(2)

鬼束ちひろがどうやって復活できたのかが、いちばんよくわかる、幻冬舎の雑誌『BARFOUT!』2007年11月号(Volume 147)。第1特集『復活の日~RISE, FALL and RETURN!!!』鬼束ちひろ×岡村靖幸。

前回にひきつづき、鬼束ちひろの単独インタビューの後半部分をレビューしてみたい。p.020~の真ん中あたりから。

barf:それ(自殺未遂)をきっかけに、人生を考え直したりは?
鬼束:ない(苦笑)。
barf:「あんまり長生きしたくない」って言ってたもんね。
鬼束:うん。でも、長いんだろうなと思いますよ。
barf:なかなか、死なないと思うよ。長生きすると思う。
鬼束:うん。くそぉ!(笑)
barf:何気に強いんだよ。
鬼束:そうかなぁ?
barf:潜在意識では、生存本能が強い人だから。
鬼束:サヴァイヴァーですか?(笑)

『BARFOUT!』のインタビュアーである山崎二郎氏の質問は絶妙だ。どうやら『BARFOUT!』誌で山崎二郎氏は、鬼束ちひろにVolume 55の頃から、最近のVolume 157まで、実に12回もインタビューをしている。その信頼関係のなせるわざなのだろう。
鬼束ちひろは、本人は人見知りしないといいつつ、強烈な人見知りであることは明らかなので。

barf:レコーディングって久しぶりで、声とか出た?
鬼束:やっぱ、苦戦した。今も苦戦してる。ちょっと痩せちゃったから大変。ひどい時は36キロとかだったから。食べてたんだけど、どんどん痩せていったって。
barf:声とか変わったよね。
鬼束:うん。元に戻したい。
barf:だとすると、余計「everyhome」を歌えてるっていうのはすごい!
鬼束:すごく練習したからね。でも、難しい。
barf:カラオケとか行く人?
鬼束:最近になって行き出して。

あくまで勝手な想像だが、食べているのに36キロまで痩せるのは、やはり神経科の医者にかかっていて、その処方薬の副作用だったに違いない。
最新アルバム『DOROTHY』では、完全に声は元に戻っている。鬼束ちひろが神経症を病みながらも、プロとして陰で努力を重ね、声量を元に戻したのだ。鬼束ファンは、デビュー当時から変わらない、そういう鬼束ちひろの生真面目さを評価すべきで、いつまでも羽毛田時代のイメージにしがみつくべきではないと思う。
でも、最近になってカラオケに行き出したという部分は興味深い。鬼束ちひろがカラオケで、何を歌って声を出す練習をしていたんだろうか?

barf:でもさ、そんなには前作から期間って空いてないんだよね。
鬼束:そう!みんなが騒ぎ立てるんですよね。
barf:『LAS VEGAS』ってタイトルは?
鬼束:『Sugar High』の時に考えてた。
barf:英語詞の曲が、緊張を緩和する効果もあって。アレンジもシンプルだけど、いろいろあるし。
鬼束:スタンダードっていうのが、私の基本ですからね。それを小林さんが汲んでくれてる感じで。
barf:その辺の音の話ってしたの?
鬼束:それが、あんまり。びっくりしたのもありましたけど。「amphibious」とか。
barf:「育つ雑草」みたいなハードな感じは今後は?
鬼束:やりたいですね。
barf:今回、初めて聴く若いリスナーも多いんじゃない?
鬼束:それと、昔からのコアなファンは付いてきてくれてますね。
barf:自分的には何点?
鬼束:いやぁ、まだまだ。70点ぐらいかな?
barf:ということは、先がある。
鬼束:うん。でも、いつも全力投球は全力投球ですけどね。
barf:最初は、それくらいの点の方がいいんじゃ?
鬼束:それはそうですね。
barf:髪の毛って切った?
鬼束:2年ぐらい美容院行かなかったから。一番長い時で、腰ぐらいまであった。

話題があちこちに飛ぶのも、インタビュアーの熟練した技術なのだろう。
「amphibious」のアレンジに鬼束ちひろが驚いていたという点は興味深い。鬼束ちひろ自身が想像していたアレンジは、「Tiger In My Love」的なものだったのだろうか?

barf:岡村さんのファンだってことで。どこに惹かれるの?
鬼束:(笑)全てですね。特に歌詞。もうわけの分からないところが。友達に大ファンがいるんですよ。その人がカラオケで歌うから覚えたんだけど。で、ライヴDVDとか自分でも買ったらすっごい面白くて。跳び箱とか、バスケット・ゴールが2個ぐらいあるんですよね(笑)。あの青春を引きずってる感じが、なんとも言えなくて。
barf:新曲は聴いた?
鬼束:さっき、話してた「歌詞を書くのが難しい」っていうのが、すごいよく分かる。
barf:ヴォイス・トレーニングとかしてるの?
鬼束:行ってたけど、もう行かないようにしようと思って。あんまり役に立たないから。役に立つ人と、立たない人がいるんだって。
barf:単純に、いっぱい歌えば戻るんじゃ?
鬼束:うん。私もそう思う。
barf:では、岡村さんとの撮影で、また。
鬼束:楽しみなんですよ。
(2007/09/14 青山一丁目にて)

どうやら単独インタビューの前半部分は、岡村靖幸との対談の前だったようだ。
全然関係ないが、カラオケが歌手のファン層を広げるのに役立っていることは、この部分の鬼束ちひろの発言でもよく分かる。だから本人映像のカラオケは、レコード会社のプロモーターが思っている以上に広告媒体として価値があると思う。だから鬼束ちひろの「育つ雑草」以降のPVもカラオケ化して欲しいのだが…。
この部分で最も興味深いのはヴォイトレの話。たしかオールナイトニッポンか、『ROCKIN’ON JAPAN』の連載の人生相談で、「歌手になりたい」という相談者に対して、鬼束ちひろはヴォイトレはしない方が良いと語っていた。
演歌歌手と違って、ポップス歌手は声質そのものに魅力のある人が多く、鬼束ちひろや柴田淳も特にそうなので、そういう歌手で、既に正確な音程やテクニックのある人にとって、ヴォイトレは意味がないのだろう。
記事を読む限り、そうとう岡村靖幸がお気に入りだったようだが、、彼の実刑が決まった時、鬼束ちひろは単に失望したのだろうか。それとも、一人のファンとして活動再開を待とうと思ったのだろうか。
では、続きの、2007/09/18 代官山でのインタビュー部分は、また回を改めてレビューしてみたい。

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