宮台真司『日本の難点』(幻冬舎新書)を読んでいる

社会学者・宮台真司の書いた『日本の難点』(幻冬舎新書)を読んでいる。

縦横無尽にさまざまな問題を、あざやかに、わかりやすい言葉で整理していく手法には、相変わらず感心させられる。さまざまな社会問題を考えるにあたって、とても参考になる観点を与えてくれる。
ただ、読んでいて非常に虚しくなる。
というのは、この本に書かれていることを実践できる立場にある人たちは、宮台真司のいう公共心を持つ少数のエリートだけだ。
僕は東京大学で、宮台真司がこの本の中で引用しているジャック・デリダなどの現代思想を学んだおかげで、この本の内容を、おそらく正しく理解できている。
しかし、僕のサラリーマンとしての日常生活は、実に下らない問題に忙殺されるだけの毎日だ。
サラリーマンとして長く働けば働くほど、仕事の内容のほとんどが、社内・社外のいろいろな人たちの「わがまま」を調整することになる。
社内のそれぞれの部署は自分の利益を主張し、社外の関係者も自分の利益を主張する。
それらがお互いに衝突するのを、どうやって調整して、妥協点を見つけるか。中堅サラリーマンの仕事をひとことで表現すれば、単なる「利害調整」である。
そういう下らない利害調整に、毎日、胃が痛くなるような思いをして、神経をすり減らして、疲れ切って家に帰ってきて。そういう毎日の繰り返しだ。
サラリーマンの利害調整の仕事には、公共性のかけらもない。
また、僕にしかない能力を発揮する機会もない。
宮台真司の書いていることはもっともだし、僕自身、ほぼ完全に同意する。
しかし、僕のように、社内外の利害調整で疲弊しているサラリーマンには、宮台真司の提唱するような、社会をより良くするための活動に参加する力は残っていない。
宮台真司は、こういう本を新書として出版することで、いったい誰に語りかけているのだろうか?
こういう本を読んで、たしかに勉強にはなるけれども、実に下らない利害調整に忙殺されるサラリーマンとしては、読んでいて、ただただ虚しい。