放置された3万個の落とし穴

最近、突発的な集中豪雨で川遊び中の人が命を落とすことが多いので、某大学が事故の履歴を調査したところ、ある中部地方の川ではこの3年間で7名もの死亡者が出ている。
NHKのニュースがそう言っていたが、3年で7人死んでいる河川災害よりも、日本で毎日100人もの人間が自殺している事の方が、遥かに重大な問題だろう。
首都高速道路で火災が起きて、完全な復旧に数か月かかるとか、連日の猛暑で熱中症で何人が死んだとか、そんなことよりも、テレビのニュースは毎日必ず昨日の自殺者数を報道する決まりにしてはどうだろうか。
例えば、天気予報の前に毎日アナウンサーが、「昨日は全国で85名の方が自殺で亡くなりました。ご冥福をお祈りします。さて次は天気予報です」などと言うことにするのだ。
そうすれば、海外のテロで何人死んだとか、飛行機事故で何人死んだとか、そんなニュースは霞んでしまうだろう。日本で毎日コンスタントに100人が自殺していることの異常さを、僕ら視聴者は嫌でも認識せざるを得なくなる。
当たり前のことだが、もしも自殺しやすい性格の人だけが自殺するなら、自殺者が生き返らない限り、自殺者の数は段々と減っていくはずだ。
現実にはそうならず、毎年一定数どころか、むしろ少しずつ自殺者が増えているというのは、それまで自殺に至らずに済んでいたごく普通の人が、今年は自殺に追い込まれたということだ。
ビデオニュースドッドコムの自殺を取り上げた放送の比喩を借りれば、日本社会には常時3万個の落とし穴があって、毎年必ずその落とし穴にはまって自殺する人が出てくるのである。
そして政府がその3万個の落とし穴をふさぐ努力をまったくしないために、着実に毎年3万人が自殺で死ぬことになる。
要するに、自殺は個人の責任ではなく、明らかに3万個もの落とし穴を放置している社会に責任があるのだ。
集中豪雨による河川の急激な増水に税金をつかって、3年間にたった数名の命さえ救おうとするなら、同じ政府がなぜ3万個の落とし穴をふさぐために税金を使わないのか。明らかに理屈に合わない。
放っておけば、毎年確実に3万人が死ぬことが分かっているのに、なぜ日本政府は手をこまぬいているのか。読者の皆さんも、不思議だと思わないだろうか?