ICタグによる書籍管理という発想の「後進性」

2008/01/01の日本経済新聞朝刊に、講談社など出版や書店、ICタグで書籍管理・09年度からという記事があった。
「年間400億円以上と、国内書籍売り上げの約2%に達するとされる書籍の万引き被害を防ぐとともに店頭でのマーケティングにも活用、低迷する出版市場のテコ入れにつなげる」とのことだ。
問題はこれが出版市場のテコ入れになるのかということだ。
万引き防止ということは、レジで支払いをする時、書籍のICタグに「支払い済み」のデータを書き込み、書店の出入口のゲートで「支払い済み」データのない書籍を持ち出そうとすると警報が鳴る、という仕組みだと思われる。
ただ、ICタグの内部構造や「支払い済み」データを書き込む機器の機密が、内部関係者やICタグ技術に通じたアマチュアが「支払い済み」データを消去する手段をインターネットで公開するのは時間の問題だ。
したがって「ICタグで管理すれば万引きを防止できる」という発想が、きわめて甘い危機管理意識の上に成り立っている。インターネットのような情報伝達手段によって、情報の流通環境そのものが変質しているのに、「ICタグで万引き防止」を考えた人たちにはその認識がまったくないようだ。
この情報流通環境の変質に対する認識がないからこそ、出版業界は低迷している。にもかかわらず「日本出版インフラセンター」という、今回のICタグのしくみを共同研究した出版業界団体は、相変わらず書籍というモノをICタグのような物理的手段で保護することで、市場のテコ入れをしようとしている。
この「ICタグで書籍管理」というのは、一見、先進的なしくみのようだけれど、実際には旧態依然とした物理的なモノとしての書籍という発想から、業界団体が抜け出せていない証拠になっている。全く皮肉なことだ。