BlackBerryが日本で絶対に売れない理由

NTTドコモが米国で人気のスマートフォン「BlackBerry8707h」日本語対応版を2007/07/23から日本国内で販売しているのをご承知の方も多いだろう。販売形態がドコモの法人営業部によるシステム販売のみなので、一般の人がBlackBerry端末を買うことはできない。
しかし日本国内でBlackBerryは、まず売れないと断言できる。今回は「日本でBlackBerryが売れない理由」を徹底的に説明したい。
BlackBerry端末は、携帯電話にWebブラウザ、メールソフト、予定表管理機能などがついたもので、ふつうの携帯電話との最大の違いは、Lotus DominoやExchangeなどのデータが、知らない間に自動的に同期されるという点だ。
ふつうの携帯電話なら、ウィルコムのW-ZERO3なども含めて、携帯電話を操作してメールや予定表を読みに行く必要がある。一方BlackBerryは「圏内」にいる限り、サーバ側からPUSH型でデータを勝手に送り込んでくれる。この点がふつうの携帯電話との大きな違いだ。
ただ、BlackBerryが国内メーカーの多機能な携帯電話に勝っているのは、じつはこの点くらいなのだ。
では、仮にもの好きな日本企業がBlackBerryを導入したとして、それがどのように使われるか、利用シーンを想像してみよう。
まずオフィスの中でBlackBerry端末を使ってメールの送受信をするか?もちろんノーだ。
NTTドコモが提供するBlackBerryサービスは、FOMAの基本料金のほかに、月額5,700円のBlackBerry利用料が加算される。それどころか、パケット定額制が適用されない。メールや予定表を読み書きすればするほど、通信料金は限りなくふくらむ。
また、携帯電話の通話料金がかかるBlackBerryが、内線電話がわりに使われることもまずないだろう。
最近はデュアルモード携帯電話といって、オフィスにいるときは無線LAN経由でIP電話になり、通話料金がかからず、オフィスから出ると携帯電話に自動的に切り替わるなる機種が法人向けに販売されている。携帯電話を内線電話としても使いたければ、どの企業もこちらを選ぶはずだ。
ということで、当然といえば当然だが、BlackBerryの活躍の場はオフィスの外だけになる。
さて、ほとんどの企業で、業務上、社外に頻繁に出かけるのは、客先に行く必要のある社員だ。
ただ、客先に常駐で仕事をする人たちは、間違いなくモバイル通信のできるノートPCがなければ仕事にならないので、BlackBerryは必要ない。
また、海外出張や国内の宿泊出張で、定期的に会社のメールを送受信したり、予定表を読み書きする必要がある場合も、作業効率を考えてほとんどの社員がモバイル通信のできるノートPCを持ち歩くだろう。
したがってBlackBeryは、日帰り出張が多い社員に限られる。各主要都市に営業所がある企業の営業担当などがこのケースに当たる。
しかし、こういった営業担当の行動パターンを思い浮かべてみよう。
出先で気になって携帯電話でメールを確認すると、重要なメールが届いている。オフィスにもどるには電車で小一時間かかってしまう。早く返答をしなければ!
そう思った営業担当がとる行動は、間違いなく電話をかけることであって、BlackBerryの小さなキーをプチプチ押して、ちんたらとメールを作成することではない。
要するに、日帰り出張をする営業担当者に、社外からメールを「送信」するニーズがあるだろうか?ということだ。これも間違いなくノーである。
営業担当者に限らず、業務上、日帰り出張の多い社員は、スピード勝負の仕事をしているケースがほとんどのはず。そういう社員が社外で、BlackBerryに限らず、携帯端末でメールを作成するなど、まず考えられない。
メールを打っているヒマがあったら、さっさと電話で顧客に回答しろ。そして時間のできたときに日報に記録しろ、となるはずだ。
メールを打つ必要がないなら、中途半端なQWERTY形式のフルキーボードも必要ない。社内のExchange Outlook Mobile Accessなどに、ワンタイムパスワードで接続して、とりあえずメールの確認ができればいいわけだ。
幸い日本の大都市では地下でも携帯電話の圏内になっていることが多い。高い通信料金を払ってわざわざBlackBerryを導入しなくても、会社のメールを確認し、通話するだけなら、今までの携帯電話で十分なのだ。
また、BlackBerryシステムを導入するには、社内ネットワークにBlackBerry専用サーバ(BlackBerry Enterprise Server for Lotus Domino/Exchange Server)を構築し、運用する必要が出てくる。
しかも、いままでの携帯電話の代わりに、新たにBlackBerry端末を購入して配布し、基本的な使い方を再教育しなければならない。BlackBerry端末は、携帯電話というよりは携帯端末(PDA)に近く、操作をおぼえるのにそれなりの時間がかかる
BlackBerry導入にそれだけの投資が必要なのに比べれば、ノートPCから会社のメールを確認できるシステムをすでに構築している企業が、携帯電話でも同じことをするのに必要な投資や運用負荷は、かなり小さい。
たとえばExchange Serverなら、携帯電話から接続するためのOutlook Mobile Accessは無償でついてくる。携帯電話用のゲートウェイとして、WisePointなどワンタイムパスワード機能のあるリバースプロキシ製品を導入すればよい。リバースプロキシのユーザライセンス料などBlackBerryの月額利用料+通信料金の数分の一に過ぎない。
以上のように、多機能な携帯電話が豊富にある日本国内で、BlackBerryの投資対効果を正当化するのはほぼ不可能である。
日本国内でBlackBerryの導入事例が出てくるとすれば、外資系企業で、本社がBlackBerryを標準の携帯端末に指定しており、日本法人でも導入せざるをえない、というケースに限られるだろう。
日本国内に本社のある企業がBlackBerryを導入するとすれば、資金に余裕があって、趣味や道楽で導入する場合に限られる。
NTTドコモは日本でBlackBerryビジネスを始めるにあたって、いったいどこまで市場調査を行ったのだろうか。一般消費者向けの携帯電話販売で、KDDIやソフトバンクに負け続けている焦りがあったのではないか。
日本でのBlackBerryビジネスは間違いなく尻すぼみになるので、NTTドコモの今後の展開を楽しみに注視することにしよう。