YouTubeで鄧麗君にはまる

再びYouTubeの話題で恐縮だが、『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビシリーズにはまった後、最近はテレサ・テンの1970年代の映像にはまっている。
ご承知のように、2007/06/02テレビ朝日で彼女の生涯を描いた木村佳乃主演のテレビドラマ『テレサ・テン物語~私の家は山の向こう』が放送された。ドラマの出来は観ずとも分かっていたので、ザッピングした程度だが、その番組宣伝として、彼女の日本での音楽活動をふりかえる特別番組が放送されていたことから、テレサ・テンの動画検索にはまったというわけだ。
以前は僕もほとんどの日本人と同じく、テレサ・テンは「つぐない」や「時の流れに身をまかせ」が代表曲の演歌歌手という程度の認識だった。それ以上のことを知ったのは、フェイ・ウォンのおかげだ。
10年以上前、フェイ・ウォン(王菲)という北京出身の歌手のファンになり、彼女がたまたまテレサ・テンへのトリビュートアルバム『菲靡靡之音(マイ・フェイバリット)』(1995年)を発売したのを、オンタイムで購入して聴き込んだことからだ。(そういえばテレサ・テンが急死したのは、偶然にもこのアルバムの発売とほぼ同時期だった)

おそらく中国人アーティストにとって、鄧麗君(テレサ・テン)は日本人にとってとは比較にならない重要性をもつ歌手なのだろう。
ただ、フェイ・ウォンのトリビュートアルバムを聴き込んだ10年前の僕は、せいぜいこのアルバムの2曲目、邦題「夜のフェリーボート」一曲を中国語で歌えるようにしただけで、それ以上、鄧麗君に深入りすることはなかった。
それが今やYouTubeをはじめとするネット上の厖大なリソースを検索できる時代になり、10年前なら大型CDショップを何軒もはしごしなければ見つからなかったような音源が比較的かんたんに手に入る。
おかげで1970年後半の鄧麗君のふくよかな姿と、伸びと艶のある美しい歌声をパソコンで楽しむことができる。
フェイ・ウォンのトリビュートでも取り上げられていた「又見炊烟」(日本語では「静かな静かな里の秋」で始まる童謡として知られている)を歌う姿や、同じくトリビュートに収録されていた「但願人長久」を、中国の古典的な民族衣装を身にまとって小舟のセットで歌う姿など、1970年代後半の鄧麗君の美しい声には時間を忘れて聴き入ってしまう。
トリビュートにもあった「南海姑娘」を歌う1970年代の鄧麗君も見つかった。ゆったりしたテンポに合わせて、バックダンサーはフラダンスを踊り、鄧麗君自身も間奏で優雅に踊っている。
フェイ・ウォンの『マイ・フェイバリット』に収録されていない曲で、これまで聴いた鄧麗君の曲の中でも、僕のいちばんのお気に入りになったのが、「月亮代表我的心」だ。とても美しいバラードで、テレサの少し中国歌唱風の味付けもあいまって、何度聴いてもうっとりしてしまう。
YouTubeで見つけた動画では、1970年代の彼女がスパンコールのロングドレスで、月明かりのさす西洋庭園風のセットの中をゆっくりと歩みながらこの曲を歌っている。
そしてもう一曲、お気に入りになったのが「小村之恋」(日本語原曲「ふるさとはどこですか」)というバラード。YouTubeには、題名のとおり地方の小さな村のロケで歩きながら歌う化粧気のない鄧麗君の姿を観ることができる。
こうしたバラード曲以外にも、ミドルテンポやアップテンポで、今の僕らが聴くと少しふき出してしまいそうな、愛らしい曲を歌う一面もあるようだ。
その典型が「甜蜜蜜」だろう。中国では知らない人がいないほど有名な歌らしい。同じ系統でかなりチャーミングだと感じたのは、アップテンポな「阿里山的姑娘」と「陪我去買菜」だ。この2曲はまさにアイドル時代ど真ん中だが、鄧麗君の歌唱力の幅の広さを教えてくれる。
他にYouTubeでは洋楽を英語で歌う1970年代の彼女の姿も見ることができる。トーラスレコード(ユニバーサル)には『GO!GO!テレサ』をぜひとも再発して欲しいものだ。
彼女の「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」的な面しか知らない日本人は、彼女の音楽性の大きな広がりの、ごくごく一部分しか知らないことになり、鄧麗君を正当に評価できていないままなのではないかという気がする。
なお、鄧麗君の北京語CDを買うならHMVのインターネットショップが良い。Amazon.co.jpよりも品揃えがはるかに豊富だ。