住めば都の東京下町

東京都墨田区に引越して数か月になる。最寄の繁華街、錦糸町は、僕にとっては典型的な、あまりぶらぶらするのに気の進まない、雑然としてくすんだ色合いのJR沿線の街だった。
でも、実際に毎週末、通いつめてみると、意外に居心地のいい街だとわかる。
過去、総武線で通過するだけだった錦糸町のイメージは、車窓から見えるロッテの商業ビルのもので、昭和40年代を思わせるその外観から、勝手に錦糸町の街全体をくすんだ色合いに塗りつぶしてしまったのだろう。
ところが、同じJR北口に隣接するアルカキット錦糸町と、少し離れたオリナスという商業施設が、それまでの錦糸町のイメージを大きく裏切ってくれた。アルカキット奥のロッテリアは週末も客が少なく、BGMがなぜかつねにJAZZということもあり、お気に入りの読書の場所になった。この文章もそのロッテリアで書いている。
土曜日の午後、このロッテリアの2階に上がると、OLらしき若い女性2人が、かなり太った中年白人男性から英語のレッスンをうける様子が見られた。
白人男性の教え方は懇切ていねいで分かりやすいのだが、レッスンの内容は初級英会話で、OL2人の質問を横で聞いていると、英文法をまともに勉強したことがないらしいのがよくわかる。
最近、この英語のレッスンの様子が見られなくなって、少しさびしい。
錦糸町のお隣の亀戸駅は、北口の商店街を歩き始めるときりがないが、駅周辺はこじんまりとまとまって、東武亀戸線のワンマン運転の列車で家路につく下町風情は悪くない。
「住めば都」の言葉どおり、墨田区(といっても亀戸駅は江東区だが)は日本橋や丸の内のオフィス街にも近く、通勤も便利、電車は東京西部のような混雑もないし、狭い路地の入り組んだ住宅街は僕の生地、大阪市生野区を思い出させ、そこここで出会う野良猫もかわいらしく、思っていたよりはるかに住み心地がよいのだ。