「根回しのワナ」

サラリーマン社会には「根回しのワナ」というものがあるが、あまり知られていない。いったん根回しや調整をしなければ仕事ができないという仕事のスタイルを身につけてしまったが最後、どんどん根回しの深みにはまっていく、という現象のことだ。
日本のサラリーマン社会では、「周到な根回し」という非生産的な労働に時間を割けば割くほど、能力がなくても出世できるという経験的な法則性がある。しかし、根回しによって出世したサラリーマンは、出世すればするほど、課される仕事が大きくなるため、さらに高度な根回しが要求される。
そこで、さらに高度な根回しに奔走すると、さらに出世して、退職するか生活習慣病で死ぬか、燃え尽き症候群で自殺するまで、根回しから逃れられないサラリーマン生活を送ることになるのだ。
この「根回しのワナ」、またの名を「根回し地獄」から逃れる方法は比較的かんたんである。まず際限ない出世をあきらめ、そこそこの生活ができる程度の地位で足るを知り、社畜としての人生とは決別し、人間らしい生活を送る決断をすることである。
そして、周囲から「あいつはぶしつけなヤツだ」「気を遣うということを知らないやつだ」と思われようが、そんなことにこだわる方がせせこましい生き方であると無言で開き直って、自分の仕事に真面目に取り組めばよい。
そうすれば会社に対して少なくとも損害を与えることはないので、解雇されることはまずない。同時に人間らしい生活が送れる。
最もバカげているのは、根回しや調整、周囲への気遣いといった非生産的な労働に疑問さえ抱かず、それらをサラリーマンとして当然の仕事、もっと言えば、それらこそがサラリーマンの仕事の真髄だと思い込むことである。