情報共有ツールとしてのExchangeの限界

10年来、Lotus Notes/Domino党だった僕が、最近Exchange Server 2003を導入したが、情報共有機能についてNotes/Dominoに比較して根本的な限界が見えてきた。
Exchange Serverの利点は何よりActive Directoryのユーザ管理と完全に連動するので、メールシステムとして運用が非常にやりやすい点だが、情報共有ツールとしては明らかに限界がある。

Exchange ServerでOutlookをクライアントソフトウェアとして情報共有機能を担うのは「パブリックフォルダ」という機能だ。Outlook上から見ると、まるでファイルサーバの共有フォルダのように、メール文書や投稿文書を階層化されたフォルダの形式で共有できる。
フォルダごとにアクセス権も設定できるし、既存のフォームだけでなく、ちょうどNotes/Dominoのように独自のフォームを設計して、独自のデータ項目をもつ文書を蓄積することもできる。
文書一覧(ビュー)についても、Notes/Dominoほど複雑な数式を埋め込むことはできないし、Notes/Dominoのように、一種類のデータに対してさまざまなビューを定義することもできないが、ある程度のカスタマイズは可能だ。
しかし、使い勝手からすると致命的な限界がある。まず一般利用者から見たときの使い勝手として致命的な限界は、未読文書数が表示されない点と、サブフォルダを含む全文検索ができない点だ。
なぜだか理由は知らないが、パブリックフォルダは、Outlook上で「お気に入り」フォルダに登録しないと未読文書数が表示されない。しかも親フォルダを「お気に入り」フォルダに登録すれば、そのサブフォルダもすべて登録されるのだろうと思いきや、親フォルダ部分だけが「お気に入り」に登録される。
したがって、パブリックフォルダの未読文書数を表示させようと思うと、サブフォルダを一つひとつ、すべて「お気に入り」に登録するというバカげたことをやらなければならない。
それに対してNotes/Dominoは、すべてのデータベースの未読文書は表示/非表示の切替が自由にできる。たしかに単一のツリー構造をもつExchangeと、独立した複数のデータベースを持つNotes/Dominoとでは、データ保持の考え方が根本的に違うけれども、受信トレイでは初期状態で未読文書数が表示されて、パブリックフォルダでは表示されないというのは一貫性に欠ける。
また、Outlookではメールボックスについては全てのサブフォルダを含む全文検索ができるのに、なぜかパブリックフォルダについては、サブフォルダを含む全文検索ができず、指定したフォルダ直下にある文書しか全文検索できないのだ。これもOutlookを使う一般利用者から見ると一貫性に欠ける。
ただしこれには対応法がある。Exchange ServerのパブリックフォルダをWindowsクライアントの「マイネットワーク」から「ネットワークプレース」として追加する方法だ。そうすると、エクスプローラから、自分のパソコン内のフォルダや、ファイルサーバ上の共有フォルダとまったく同じように、サブフォルダも含む全文検索ができる。
しかしこの方法にも欠点があり、パブリックフォルダに蓄積した同じメール文書群を、Outlookから見るとmsg形式なのに、ネットワークプレースとして追加してエクスプローラから見るとeml形式になってしまう。
msg形式のファイルはダブルクリックするとOutlookで開くが、eml形式のファイルはOutlookで開くことが出来ないので、Outlook Expressが起動してしまうのだ。
技術的には、同じメールボックスをマイクロソフト独自のMAPIという通信手順でのぞくとmsg形式(おそらくマイクロソフト独自の形式)で見え、WebDAVというインターネット標準の通信手段でのぞくと汎用性のあるeml形式で見えるということなのだろう。
いろいろ事情はあるのだろうが、これも一般利用者から見ると一貫性を欠く振る舞いだ。
全文検索についても、Notes/Dominoは、インデックスを作成したすべてのデータベースが対象になるので、Exchange Serverのようにメールボックスとパブリックフォルダの扱いが違うといったことは起こらない。
また、システム管理者から見たときには、パブリックフォルダのアクセス権設定にユーザグループが使えないという致命的な欠点がある。
パブリックフォルダは、サブフォルダごとに異なるアクセス権を設定することができるのだが、そのとき、Active Directoryから個々のユーザ名を指定することしかできず、Active Directoryで定義されているセキュリティグループは指定できない。これは、多くのユーザにパブリックフォルダを公開したいとき、非常に不便である。
また、システム管理者から見ると、このようなパブリックフォルダの仕様は、やはり一貫性を欠いている。というのも、ファイルサーバなどの共有フォルダのアクセス権設定には、セキュリティグループを指定できるからだ。
やはり情報共有ツールとしてはNotes/DominoはExchange Serverよりもよく考えられている。そもそもExchange Serverはメールサーバであって、情報共有機能はおまけみたいなものなのだから、当然といえば当然なのだが、それにしても、未読文書数と全文検索という、ごく基本的なところでつまずいてしまったのではNotes/Dominoの敵ではない。
しかし、では僕がNotes/Dominoにもどる気があるかと言えば、残念ながらその気はまったくない。何より独自クライアントソフトであるNotesに必要な、IDファイルという認証用ファイルの全社員への配布のことを考えると、それだけでもNotes/Dominoの導入はもううんざりと思ってしまう。
Webブラウザで使えるのはメールボックスだけで、独自開発したDominoデータベースはそのままでは使えない。この点からもNotes/Dominoを導入するなら、Notesクライアントが必須だが、IDファイルの配布はうんざりだ。
また、Dominoのデータベースとしての性能は、普通のPCサーバを使っている限り、やはり1データベースあたり数千文書が限界だ。それ以上のデータ量になると文書一覧(ビュー)が表示されるまでに10秒以上かかって、とても実用に耐えなくなる。
Lotus Notes/Dominoの新しいバージョンは、今年の夏に発売されるというが、はたしてIDファイルが不要で、サーバとhttpとhttpsで通信するリッチクライアントが提供されるか、そしてデータストアとしてDB2が完全サポートされるか。もしこの2点が実現されたら、Exchangeユーザは今からNotes/Dominoに切り替えてもいいだろう。と言うより、切り替えるべきだろう。
実際、ディレクトリシステムとしてはNotes/DominoのDomino Directoryの方がカスタマイズの自由度が高いし、Notes/DominoのメールボックスにはIMAP接続できるので、Outlook上で個々のユーザがExchangeのメール文書をNotes/Dominoのメールボックスに移行することもできる。
パブリックフォルダのデータも、OutlookのVisual Basic for Applicationsを使えば、文書数によっては処理時間がかなりかかるかもしれないが、カスタマイズの自由度の低いExchangeから、自由度の高いNotes/Dominoへのデータ移行なので、比較的簡単なコーディングで移行できるはずだ。
もう少し早くNotes/Dominoが進化してくれればよいのだが。

情報共有ツールとしてのExchangeの限界」への0件のフィードバック

  1. ド壺

    Notes VS Exchange

    別記事のコメントにNDOMINO-S様が貼り付けてくれたリンク先のブログを眺めてたら、
    気になる記事↓を発見。
    情報共有ツールとしてのExchangeの限界(by 愛と苦悩の日記)
    wiki側で細々とアンケート取っていて、まだ回答数が少ないのですが、
    すでにサポート終了しているR5を使用しているところは
    比較的に多そうな気がします。
    そういうところは、R7へ移行するか、それともMS社製Exchangeへと移行するか
    のあたりで選択を迫られていると思いますが、
    その判断材料の1…

  2. IBM Lotus Notes/Domino (R) をこよなく愛して。。。。

    興味深い記事

    色々と探し物をしていたら、興味深い記事を見つけました。
    「情報共有ツールとしてのExchangeの限界」
    と題された記事で、実際に移行をされた方の感想?です。
    ここで紹介するのもどうかと思いましたが、非常に興味深かったので紹介しておきます。
    私が知る前に…