宮台真司著『絶望・断念・福音・映画』『援交から天皇へ』

宮台真司『絶望・断念・福音・映画―「社会」から「世界」への架け橋』(メディアファクトリー)と『援交から天皇へ―COMMENTARIES:1995‐2002』(朝日文庫)を読んだ。
『絶望・断念・福音・映画』は宮台真司による映画評論で、取り上げられている映画の内訳としては意外に米国映画が多く、蓮実重彦の映画評論のように映画についての豊富な教養を必要とされる本でもない。
また、形式に焦点をしぼった蓮実重彦の映画批評をよく知っている宮台氏が、あえて、映画の「形式」ではなく「意味内容」を「実存的」に分析するという、時代遅れの手法をとっているので、本格的な現代批評に親しみのない人でも、とっつきやすい内容になっている。
もっと言えば、すべての映画について物語が要約されているので、ふだん映画を観てい人でも議論についていける。
そもそも本書は、映画批評の形を借りて、前著『サイファ覚醒せよ!―世界の新解読バイブル』(ちくま文庫)の議論を敷衍するために書かれているので、半分は映画評論だが、残りの半分は宮台真司の思想が延々と展開されていて、どちらかといえば宮台思想の方が主役である。
なので、映画評論というよりは、宮台真司の思想の、宮台氏自身による、映画をネタにしたわかりやすい解説書と言うべきで、最近の宮台真司の考えていることを知るのに比較的手軽な入口になる。おすすめの本である。
『援交から天皇へ』は宮台真司が書いた「解説」を集めた単行本の文庫化だ。こちらは宮台氏がそれぞれの小説や映画の作者の創作意図を、パターン化してわかりやすく言語化していく過程が痛快だ。
どちらの書物にも言えることだが、とくに『絶望・断念・福音・映画』には宮台氏の過去の個人的な体験が豊富に語られている。大学教授がこんなプライベートなことまで書いてしまっていいのかということまで、作品の実存的分析の一部分として書かれている。
これらルソー的「告白」の部分も、ミーハーな宮台真司ファンとしても十分に楽しめるし、氏の思想の背後にはどのような実生活からの裏付けがあるのか、よく理解できる。
やはり学者というのは、個人的な実生活に根ざして内部から湧き出す意欲のようなものがなければ、とても研究生活を続けることができないのだということもよくわかる書物だ。研究職を目指している学生にとっても大変参考になると思われる。
(僕はその動機付けのなさに、研究生活を断念したクチなのだが)