IBM Workplaceはどこまで使えそうか

最近、Domino Designer 7 でWeb対応のDominoアプリケーションを開発していて、RDBMSと連携させて数万件のデータを扱うアプリケーションは、やっぱりDominoには無理だなぁと痛感した。
Webベースのグループウェアで、メール、グループスケジュール管理、会議室予約、掲示板、電子会議室、文書管理などの基本的な機能も持っていて、なおかつ、Lotus/Dominoに近いカスタマイズの柔軟性を持っていて、なおかつ、数万件単位のデータを扱うWebベースのデータベースアプリケーションをシングルサインオンで統合できるような製品がないだろうか、と考え始めたところへ、目に留まったのが IBM Lotus製品群の IBM Workplace だった。
先日もこの「愛と苦悩の日記」でふれたように、Workplace Designerという開発ツールは、RADツールとしてなかなか筋がいい。ではポータル製品としてのIBM Workplaceはどうだろうか、ということで、IBMの方から直接この製品についてじっくりお話を伺う機会があった。
結論をひとことで言えば、IBM Workplaceは、QuickPlaceの後継製品で、その域を出ていない。たとえばIBM Workplaceでできないことをあげてみよう。一つは単純なメーラーとしての機能。サイボウズやdesknet’sなどWeb型グループウェアに当然のようについているWebメーラーとしての機能がない。また、Notes/Dominoと違ってメール送受信サーバは別途構築する必要がある。
次に、個人のスケジュール管理ができない。IBM Workplaceでは、チームとしてのスケジュール管理をするカレンダーは存在するが、個人のスケジュールが管理できない。会議室予約の機能もない。
例をあげると、Aさんが「営業チーム」のチームスペースのカレンダーに、来週の予定を登録しても、そのデータは同じAさんが「システム再構築チーム」のチームスペースのカレンダーを開いたときには、反映されていない。IBM Workplaceのスケジュールデータは、あくまでチームにぶら下がるデータであって、個人にぶらさがるデータではない。したがって排他制御の必要な会議室・備品予約は当然不可能である。
また、文書管理機能では、Windowsのエクスプローラから、まるでファイルサーバの共有フォルダ上にあるファイルのように、直接、ファイルを編集できるだけでなく、チェックイン、チェックアウト機能もついているが、これにはクライアント側に専用ソフトウェアのインストールが必要である。この専用ソフトウェアのインストールには、管理者権限で各クライアントPCにログインする必要がある。
つまり、管理者権限のないユーザでクライアントPCにログインしている人は、Webブラウザ経由で、いったん文書をローカルに保存して、編集して、またアップロードするという手順でした、文書管理機能を利用できない。最近は個人情報保護意識の高まりもあって、一般社員に管理者権限でのログインを許している会社などほとんどないだろう。実は、このIBM Workplaceの文書管理機能はDomino.Docなのだ。
そして、ユーザ認証にはLDAPに対応しているが、IBM Workplace内のポートレットで、たとえばLDAPサーバ本体であるDominoのWebアプリケーションを起動すると、フォーム認証を要求されてしまう。つまりIBM Workplace単体では、DominoのWebアプリケーションとのシングルサインオンさえ実現できない。
ここまでくると、IBM Workplaceという製品はNotes/Dominoを導入している前提で初めて意味のある製品であるということがわかる。つまり、QuickPlaceのようにチーム単位でエンドユーザが手早く情報共有の空間を作成するためのツールであり、Domino.Docのように、サーバ側ファイルとローカル側ファイルをシームレスに編集するには専用ソフトのインストールが必要なツールである。
しかしながら、IBM WorkplaceはあくまでWebベースの製品なので、Notes/Dominoとの厳密な意味でのシングルサインオンは不可能である。それは、同じNotes/Domino上でも、Notesアプリケーションと、DominoのWebアプリケーションとの間で、厳密な意味でのシングルサインオンが不可能なのと同じことである。
さて、そうなってくると、社内のユーザ認証をActive Directoryでおこなっていて、Notesクライアントを全社展開していない企業があったとして、IBM Workplaceを導入する意味はいったいどこにあるだろうか。おそらく、ない。そういう企業は迷わずMicrosoft製品群を選択するだろう。
ExchangeサーバならActive Directoryと同一の管理画面からユーザ管理ができるし、OutlookはMS-Office Standard版を会社としてボリュームライセンス購入していればオマケで付いてくるので、Notesクライアントのように追加ライセンス費用が不要だし、1台ずつ導入してまわったり、IDファイルを配布したりする必要もない。
Webポータル製品にしても、SharePoint Portalなどの製品なら、IIS側の設定をWindows認証を利用する基本認証にすれば、厳密な意味でのシングルサインオンが実現できてしまう。
Microsoft系製品に存在せず、Notes/Dominoに存在する特長と言えば、RADツールとしての側面くらいになる。いくらVisual Web Developer Expressが無料だと言っても、ASP.NETのWebコンポーネントを使って、かんたんなNotes/Dominoデータベースと同等のアプリケーションを開発しようとすると、おそらく2倍くらいの工数はかかるだろう。(その代わりRDBMSをバックエンドのデータストアとして使えば、処理性能はNotes/Dominoよりもはるかに良い)
したがって、新規にNotes/Dominoを導入できる企業の条件としては、以下のような内容になるだろう。
・社員数が300人程度まで。
・Notes/Domino経験者が社内に存在するか、すぐに手配できる。
・お手製の小さな業務システムをつぎつぎ量産したい。
やはりIBM Lotus製品群はリッチクライアント技術とNotesがどう融合するか、具体的な製品として目に見えてこなければ、選択しづらい。Notes/Domino大好きな僕でさえこういう結論を出さざるを得ないのだ。