『日経ビジネス』「著者に聞く」に梅田望夫氏登場

先々月だったか『日経ビジネス』無料試読キャンペーンのダイレクトメールが届いていたので、2006/05/22号まで無料で読める状態にある。今日2006/05/08号を読んでいたらp.75にいきなり梅田望夫氏が登場。でも『日経ビジネス』も今ごろ『ウェブ進化論』を「著者に聞く」コーナーで取り上げるのは遅すぎるだろう。
たった1ページの記事だが、梅田氏は本書を書いた狙いを、企業組織の中の「大人」たちにネット世界で起こっていることを理解してもらうためだったと語っている。
「僕の若い友人が『ウェブ進化論』を何冊も買って、上司に配って回ってくれたそうです。そうしたら上司が『おまえたちが言っていることがようやく分かった』と。それに続けて『おまえたちの説明が悪いから、これまで分からなかったんだ』と言われたそうです」
『ウェブ進化論』を読んで梅田氏の友人の上司が、いままで理解できなかった「ネット世界の最先端で起きている変化」を理解できるようになったというのは、おそらく勘違いだろう。彼らは理解できた気分になっただけで、しかも、理解できた気分になっただけだ、ということに気づいていない。
その証拠が「おまえたちの説明が悪いから」という言いぐさである。いかにも上級管理職らしい言い訳ではないか。彼らは自分たちに理解できないことに出会うと、必ず他人のせいにする。
彼らが本当に梅田氏の意図を理解したのであれば、「でもまだわからんところがあるから、こんど詳しくネット世界の話を聞かせてくれよ」と言うはずではないか。そう言わずに、『ウェブ進化論』を読んだ後でもなお、自分の理解の限界を若者のせいにしている事実こそ、『ウェブ進化論』を彼らが理解していない何よりの証拠だ。
組織の中の「大人」たちは、結局のところ『ウェブ進化論』がベストセラーであるということ、そして筆者の梅田氏が学歴からしてエリートであることから、理解したような気になっているだけなのだ。
どうして梅田氏の「若い友人」は「どういう風に理解されましたか」と上司に反問して、本当に理解したのかを確認しないのだろう。『ウェブ進化論』を読んだことに安心して、上司と部下の対話が止まってしまったのでは、逆に、梅田望夫氏の2つの別の世界の橋渡しをしたいという意図が、完全に裏切られたことになるのではないか。
このように冷静な状況分析をせず、友人の話に「『ウェブ進化論』を書いて良かった」と思っているらしい点がいかにも梅田氏らしいし、梅田氏の「友人の上司」もまた、『国家の品格』の場合と同様、あっさりベストセラーという権威に流されて物事を理解した気分になって思考停止すると同時に、理解不足を自分の部下に責任転嫁している点が、いかにも「おじさん」世代らしい。
梅田望夫氏のベストセラーは何も変えてはいないのだ。いや、むしろ「おじさん」世代を分かった気にさせることで、かえって「おじさん」世代とネット世代の若者の対話を止めてしまっているとさえ言える。
梅田望夫氏自身がそのことに気づいていないのだとすれば、梅田望夫氏はやはり、彼自身、典型的なエスタブリッシュメントなのである。