『You Raise Me Up』についていろいろ

フィギュアスケートの荒川静香選手がエキシビジョンの音楽として採用したことで有名になった『You Raise Me Up』という曲。荒川選手がつかったのはCeltic Womanというアイルランド出身の女性グループ演奏によるものだが、元々はノルウェー人男性とアイルランド人女性のニューエイジ・ミュージックのデュオ「Secret Garden」が2002/02/08にオランダで発表したアルバム『Once in a Red Moon』の2曲目に収録されている曲だそうだ。

Secret Gardenの公式Webサイトによれば、Secret Gardenは南ノルウェー出身のロルフ・ロヴランド(Rolf Lovland)という作曲家、プロデューサ、キーボード奏者と、フィオヌァラ・シェリー(Fionnuala Sherry)というアイルランド出身のバイオリン奏者のデュオである。『You Raise Me Up』の曲はロルフ・ロヴランド、歌詞はアイルランド人の小説家・作詞家のブレンダン・グラハム(Brendan Graham)によるもので、Secret Gardenのアルバムではブライアン・ケネディという歌手が歌っている。
ブレンダン・グラハムは1945年生まれ。小説は『The Whitest Flower』(1998年)と『The Element of Fire』(2001年)のたった2冊という寡作ぶり。前者はアイルランドでベストセラー第2位になったそうで、『Die Irische Nacht(アイルランドの夜)』という題名でドイツ語訳されている。この作品はアイルランドの大飢饉を伝えるドキュメンタリー小説とされており、マサチューセッツ工科大学の教科書として採用されているとのこと。彼はまた作曲家でもあり、元アイルランド音楽権利団体の首長。現在は西アイルランド在住。
『The Element of Fire』はアイルランドの大飢饉で未亡人となったヒロインのエレンが、生き残った二人の子供、そして飢饉のさなか取り残されていた「物言わぬ少女」とともに1850年代の米国ボストンに逃れるという物語。当時のボストンは米国交通・文化の要所で、エレンは安定した生活と新たな恋人を得るが、旧世界を捨ててきた絶望感と、米国で始まろうとしていた南北戦争の動乱の中、人生と愛の葛藤に翻弄されるという物語らしい。
話を『You Raise Me Up』にもどすと、この曲は多数のアーティストによってカバーされており、中でも有名な演奏がジョシュ・グロバン(Josh Groban、1981/02/27米国カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ)によるもので、2004年にはアダルト・コンテンポラリー・チャートで1位を獲得しているらしい。
ケルティック・ウーマン - Celtic Woman - You Raise Me Up
この曲の歌詞は宗教的な内容だという噂がインターネット上でも書かれているが、作詞者ブレンダン・グラハムの上述のような作風を考えると、素朴で力強いラブソングと考えるのが自然だろう。Celtic Womanの演奏では一番の歌詞しか歌われないが、Secret Gardenのオリジナルでは二番まである。
When I am down and, oh my soul, so weary;
When troubles come and my heart burdened be;
Then I am still and wait here in the silence,
Until you come and sit awhile with me.
ああ、打ちひしがれ、疲れきったとき
もしも困難がおとずれ 心に重荷を負ったとしても
じっとここで静かに待つ
あなたがやって来て しばらく座ってくれるまで
You raise me up, so I can stand on mountains;
You raise me up, to walk on stormy seas;
I am strong, when I am on your shoulders;
You raise me up… to more than I can be.
あなたが力づけてくれるから、山の頂に立つこともできる
あなたが力づけてくれるから、嵐の海もわたることができる
あなたの力を借りれば、私は強くなれる
あなたが力づけてくれるから、ひとりでできないこともできる
There is no life – no life without its hunger;
Each restless heart beats so imperfectly;
But when you come and I am filled with wonder,
Sometimes I think I glimpse eternity.
飢えのない人生などない
気ぜわしい胸の鼓動はひどく乱れている
でもあなたが来て、私が奇跡に満たされるとき
時に永遠をかいま見たと思うほどになる
(※筆者による試訳)
この曲の誕生についてSecret Gardenの公式Webサイトには以下のような記述がある。
「この曲は有名なアイルランド民謡の断片をメロディーに織り込んで、ゆったりしたアリアとして生まれた。この曲は不採用にしようとしたのが、どうしても心に引っかかった。おそらくこの曲は別の形になりたがっているのだろうと考え、歌詞をつけることを思いついた。そこでアイルランドの作家ブレンダン・グラハムにこの曲を聴いてもらった。彼の本『The Whitest Flower』『The Element of Fire』はエレン・ルア・オマリーの生涯を描いたベストセラー小説だが、この2冊が私たちに強い印象を与えたからだ。彼は即座にこのメロディーの中に「物語が聞こえてくる」と言った。そしてその晩、歌詞の第一稿を仕上げた。冒頭のバイオリンソロは、原版のデモテープのためにフィオヌアラが最初に録音したもので、そのまま手を付けずにおいた。バグパイプの名奏者、リアム・オ・フリンが曲の中盤をリードしている。ブライアン・ケネディーとトレイシー・キャンベル=ネイションの心のこもった歌声は、ロンドン・コミュニティー・ゴスペル合唱団、アイルランドのコーラスグループ「アヌナ」とともに、この歌詞の深く精神的な切望を完全に表現している」。

※2008/02/20付記:この「You Raise Me Up」は透明でおだやかな歌声の女性歌手にぴったりと思っていたが、たまたま先日、日本でインディーズデビューしたジェイド・インという中国人女性歌手を見つけた。彼女の声はまさに「You Raise Me Up」のためにあると言って過言でない。ご興味のある方は右の1stアルバム『七彩音色』のジャケットイラストをクリックしていただきたい。無料で「仰げば尊し」と「Danny Boy」の歌唱を聴くことができる。
1stアルバムはiTunesでも配信されている。ここをクリック→Jade Yin - 七彩音色~なないろねいろ~Prologue

『You Raise Me Up』についていろいろ」への0件のフィードバック

  1. R.Shingen's Blog

    You Raise Me Up – あなたが力づけてくれるから、ひとりでできないこともできる

    #写真はチェコ・プラハ市内。ホントは、このテーマにあうアイルランドの写真なんだろうけど、なかったので。で、どちらも大国を隣に持つ小国、というつながりで選択(く、苦しい・・・。ちなみにアイルランドの隣国はイギリス、チェコの隣国はドイツ)
    たまたまVIERA(パナソニックの液晶TV)のCMを見たら、流れていた曲。
    曲もいいが、何よりも歌声がいいので、そこはネット時代のこと、早速ネットでいろいろ調べた。
    で、その曲が、"You raise me up"で、もともとはシークレットガーデンが作曲…