『ぼくの地球を守って』OVA総集編

■さて、例によって「アニメーション、漫画嫌いの僕が、日本が世界に誇るサブカルチャーであるアニメを見よう!」キャンペーンの続きである。今回ご報告すべきは2作。『王立宇宙軍 オネアミスの翼』、つまり『新世紀エヴァンゲリオン』のGAINAXが初めて制作した作品。そしてなぜか「ぼくたま」、『ぼくの地球を守って』である。ただしOVAの総集編『総集編完全版~亜莉子から輪くんへ』でダイジェストを観たにすぎないが。
『王立宇宙軍 オネアミスの翼』については後日ゆっくり書くとして、今回はなぜ「ぼく球」なのかの説明をしなければならない。アニメを見ようキャンペーンのために、いままで寄りつくことのなかったTSUTAYAのアニメコーナーを何度もおとずれるようになったわけだが、『ぼくの地球を守って』のOVAが目に止まってしまったのだ。目に止まるからにはすでに僕はこのアニメ、というより白泉社から発売されている日渡早紀原作のこの漫画の題名を知っていなければならない。
ではいつ知ったのかというと、TSUTAYAでそのVHSビデオカセットを見た瞬間に「覚醒」したのだ。僕は自分が『ぼくの地球を守って』という固有名を知っていることを思い出した。しかしこの固有名を知ったのは僕がこうして地球に「転生」する前、月にいた前世のころの話ではない。残念ながら僕は一度も「転生」せず、三十数年前に地球に生まれて平々凡々たる会社員をやっている始末だ。
TSUTAYAでの「覚醒」によって僕が送り返されたのは、ほんの十数年前、杉並区の永福町というところに大学生としてひとり暮らしをしていたころである。いまとなっては信じられないことだが、僕はどうやらそのころ日本でいちばん偏差値の高い大学の学生だったらしいのだ。そしていまではまともに聞き取れないフランス語の講義さえ受けていたという。それらもすべて、まるで夢の中のように遠くかすんでしまっている。
僕の所属する学科の研究室にはちょっと美少年タイプの助手さんがいて(以前にもこの日記に登場していただいたが)、その助手さんが『ぼくの地球を守って』に完全にハマっていたのだ。研究室の壁に勝手に個人的な趣味で『ぼくの地球を守って』のポスターを貼っていたくらいだ。
どおりで『総集編完全版~亜莉子から輪くんへ』の発売は1995年、総集編のもととなるOVAの発売は1993年である。十数年前にふっと動き始めた僕の右手が、いまごろになってようやくTSUTAYAの棚にあったVHSビデオに届いたというわけだ。
でも、あの夢の中のようなころのことに、いつまでもこだわっていても仕方ない。「ラズロ」と「キャー」が待っていると思って駆け込んでも、そこには虚しい部屋があるだけ。ただ、壁には天井までとどく「木蓮」の肖像がある。僕は「木蓮」の歌声によって「地球」へ帰って来なければならない。あそこにあるのは僕のむくろだけで、僕は平々凡々たる会社員にすぎないのだから。「九年」どころか、あれからもう十年以上も経っているのだ。しかしそれでも僕はいまだに『エクリチュールと差異(上)』を読んでいる。読み直している。「木蓮」の最期の言葉を思い出そう。
「私たちは みんな 未来へ・・・
未来へ 還るの
みんな 未来へ 還っていくんだわ
あなたが 懐かしいのも
こんなに 懐かしいのも
きっと また 未来で 出会えるからなのね
約束よ
決して自ら 命を 絶たないで
お願い・・・」
(「木蓮」最期の台詞より)
そうすれば、きっと僕は未来へと還っていくことができる。ところで、僕を呼び戻し、再び呼ぶ歌声は、僕の場合いったい誰の歌声なのだろうか...。
ちなみにビデオのクレジットで初めて知ったのだが、アニメ版の音楽は溝口肇担当。主題歌の作曲は彼を夫とする菅野よう子。ということは『天空のエスカフローネ』もそのうち観る必要があるということか。
【参考Webサイト】「竹の歌が聞こえる」