高校生意識調査で誤った分析がひとり歩き

財団法人日本青少年研究所がおこなった「高校生の友人関係と生活意識-日本・アメリカ・中国・韓国の4ヶ国比較-」という調査の結果が、今朝布団の中で聴いたAMラジオで取り上げられていたので、同研究所のWebサイトで詳細を確認してみた。
※フォロー記事を「think or die」本体サイトにアップしておいた。「高校生意識調査の正しい分析法」
「単純集計表」で生の結果を読むことができるが、調査結果をそのまま受け取ってもよさそうな設問とそうでない設問がある。たとえば「問6 あなたは次のことにどのくらい関心がありますか」では、さまざまなことがらについて「非常に関心がある」「まあ関心がある」「あまり関心がない」「関心がない」の4段階で回答させている。
このように心理的な強度をたずねる質問は、各国の社会的な文脈によって選択肢の意味そのものが違ってしまうので、調査結果を鵜呑みにするわけにはいかない。米国のように日本に比べると平均的に自己主張の明確な社会に生きている高校生は、「非常に関心がある」や「関心がない」という両極の回答率が高くなり、逆に日本人の回答は「まあ関心がある」「あまり関心がない」というあいまいな選択肢の回答率が高くなる。
また、一般的に「善」とされていること(勉強や成績など)への関心を問われたとき、実際以上に自分をよく見せようとする自己顕示欲が働きやすい国民性か、逆に謙虚さが美徳とされる国民性かによっても、回答結果が異なってくる。したがって「問6」の回答結果はよほど慎重に読み込まないと、単純に数字だけを見て「日本の高校生は中国・韓国に比べると勉強や成績への関心が低い」と結論づけるのは早急だろう。
対して「問8 あなたは現在、大事にしていることは何ですか?」のように、多数の選択肢の中から複数回答させる設問は、一点だけ注意すれば比較的参考になる。その一点というのは、複数回答を許した場合、一人の回答者が平均いくつの選択肢に丸をつけるかである。
「問8」の結果の数値を日本青少年研究所のWebサイトで見ていただければおわかりのように、米国人・中国人・韓国人は日本人よりたくさん丸をつけていることがわかる。これは日本人高校生が、他国の高校生よりも「大事にしていること」が少ないという意味ではなく、「いくつでも丸をつけていいよ」と言われたときに、どれくらい遠慮なく丸をつけるかという国民性の違いにすぎない。
したがって、国別に回答率合計に対する各選択肢の回答率をさらに百分率表示する必要があるが、それにしてもこの「問8 あなたは現在、大事にしていることは何ですか?」ははっきりと国別の格差が現れている。
上述のように、一般的に「善」とされていることについての考えを他人から質問されたときの自己顕示欲は割り引く必要があるので、「希望の大学に入学すること」「成績がよくなること」で日本と他の3か国に差が開くのは、本当に個々の高校生が「大事にしている」かどうかとは直接関係ない。この調査結果をもって、日本の高校生の「希望の大学に入学すること」への関心が他国と比べて異常に低いと結論付けるのは間違いだ。
しかし、「親に自分のことをわかってもらうこと」で、日本 7.9%、米国 36.5%、中国 38.4%、韓国 25.6%というのは、以上の諸点を割り引いてもなお差が大きすぎる。同じく「家族が仲良くすること」で、日本 13.8%、米国 57.7%、中国 42.0%、韓国 35.2%というのも差が大きすぎる。
つまりこの「問8」から読み取れるのは、日本人が志望校への進学や成績に対する関心が低いということではなく、他の3国と比べて極端に「家族との関係」を軽視しているという傾向である。
同研究所のレジメでは「問8」について、「3 現在の希望」という部分で「成績がよくなる」ことについて米中韓の7割台に対し日本は3割台と特記しているが、そもそも日本人は丸をつけた選択肢の数(選択率の合計)が他国の半分なので、「成績がよくなる」ことについての関心は4か国ともほぼ同じ、という結論が正しいのではないか。
次の「問9 あなたは、どのタイプの生徒になりたいと思いますか」では同様に、「リーダーシップの強い生徒」という選択して、日本 15.7%、米国 54.1%、中国 53.0%、韓国 48.7%と日本と他の3国に明確な差があり、「先生に好かれる生徒」でも日本 13.9%、米国 3.8%、中国 49.9%、韓国 35.8%と、日米と中韓で大差がある。
せっかくこういう調査をするのであれば、結果について専門的な統計学的処理をしてから要約を作ってほしいものだが、案の定、マスメディアでは「日本の高校生は成績に対する関心が低い」という誤解がひとり歩きしているようだ。

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