転職メルマガにドリアン助川

■毎日キャリアナビという転職サイトから毎週メールマガジンが届くのだが、「明川哲也の俺が聞いちゃる」というコーナーがある。転職サイトによくありがちな実践的な転職相談というよりは、毎回ほとんど人生相談みたいな内容で読むに値しないとやりすごしていた。
ところが先日、ヒマをもてあましてこの相談コーナーをよくよく読んでみると、回答者である「明川哲也」という人物が、元「叫ぶ詩人の会」のドリアン助川であることに気づいて驚いた。僕がまだ名古屋で某大手電機メーカの経理部にいたころ、よく聴いていた深夜AMラジオ番組『ドリアン助川の正義のラジオ!ジャンベルジャン!』のパーソナリティーだったあのドリアン助川ではないか。
リスナーからのきわめて真面目で重い内容の人生相談に、ドリアン助川が回答するというより、いっしょに悩むというスタンスで、当時の派手な外見とはうらはらに氏の誠実さがにじみでるとても良い番組だったと記憶している。
実はそのドリアン助川改め、明川哲也氏が原稿を書いていたということで、改めて「俺が聞いちゃる」のバックナンバーを読み返してみると、他の転職サイトでは読めない、ブンガク的かつテツガク的な転職相談になっている。さすが『ジャンベルジャン!』のパーソナリティ、その回答は単なる転職テクニックにとどまらず、人間の自意識や生きることの意味そのものにまで踏みこんだ広がりがあり、映画や文学作品など、およそビジネスとは無関係なジャンルからの引用も豊富だ。
そもそも転職というイベントは人生の転機なのだから、転職相談が単なるテクニックの伝授にとどまることの方がおかしいのかもしれない。転職しようと考えている人たちにとって、本当に自分は転職すべきなのかという「Why」の問題は、どうしたら希望どおりの転職ができるのかという「How」の問題よりもはるかに重要なはずなのだ。ところがほとんどの転職サービスは方法論・技術論の疑問には答えてくれても、「なぜ」の問題には答えてくれない。
働くということについて今の40代、50代が「なぜ」の問題を深く考えずにやりすごしてきた結果、いま日本で何が起こっているかは周知のとおりフリータやニートの問題だ。働く意欲の欠如に対して、職業訓練や就業支援など、純粋な技術論で対処することはたしかに効率がいいが、働くことについての「なぜ」というテツガク的な疑問を問わないままでは、おそらく根本的な解決にはならない。
働くことについて技術論の対処両方しか提示できない人たちは、自分たち自身、働くことについて疑問を抱いたことのない人たちに違いない。自分の理想に向かって一直線に突き進んできたようなタイプの人たちが、働くことに「なぜ」という疑問など抱くはずがない。フリータやニートが働くということに関する疑問についていっしょに考えたいと思う人は、むしろ明川哲也氏のような、ブンガク的でテツガク的な人物、つまり、多くの人が当たり前と考えて疑いもしないようなことを疑う能力のある人物なのではないか。