日本に米国の「へたり牛」発覚を批判する資格があるか

■米国が日本向けに輸出した牛肉について、成田空港で危険部位の混入が発見された件(2006/01/20)、そして米国農務省監査局(OIG)の監査報告書で、歩行困難ないわゆる「へたり牛」20頭が原因不明のまま食肉処理されていた件(2006/02/08)について。
たしかに米国が日本との規制に違反し、しかも大統領や米国議会からそれを正当化するような発言が聞こえてきているのは許しがたい。また、日本国内には「米国と日本とでは食べ物についての考え方が根本的に違う、米国は食の安全性の管理について本当にいい加減だ」という意見も多くあるようだ。
ただ、成田空港で危険部位が見つかった直後の、いわば最悪のタイミングで、米国農務省の監査報告書がちゃんと「へたり牛」の食肉処理を公式に報告できている、その米国社会の制度的な透明性には、あきれる一方で、非常に驚かされる。
日本国内で安全性が問題になった事件といえば、2000/06の雪印乳業の低脂肪牛乳による集団食中毒、2001/10の雪印食品による牛肉偽装事件、最近ではヒューザーが販売したマンションの耐震強度偽装が真っ先に思い浮かぶ。
ご承知のように雪印食品の牛肉偽装事件は、雪印食品の取引先の内部告発でようやく明るみに出ており、マンションの耐震強度偽装も同じくイーホームズから国土交通省への情報提供から始まっており、こちらも内部告発である。雪印乳業の集団食中毒にいたっては、実際に被害者が出るまで明るみに出なかったという始末だ。
米国では農務省の監査制度がちゃんと機能しており、「へたり牛」の問題は内部告発や被害者が出る前に明らかになっている。それ以前の問題として米国国民はBSEのリスクを承知で国内(米国)産の牛肉を食べている。
それに対して実際に被害者が出たり、関係者からの内部告発があるまで、「食」や「住」など、国民の生命にかかわる問題が明るみに出ない日本のこの不透明さ、制度がまったく機能していない体たらくはいったい何だろうか。(地震大国の日本が建物の耐震強度を確保するための制度をまともに運用できていなかったのだから、なおさらだ)
もし僕が米国人なら、日本人の友人に対してこう言いたくなるだろう。「牛肉偽装や耐震強度偽装を内部告発でしか明るみに出せないような日本の方が、よほど国民の生命の安全について鈍感なのではないか」と。