少子化に戦争の比喩

■今日の日本経済新聞朝刊の「人口減と生きる」はまるで大本営発表の戦意高揚プロパガンダだ。
「出生減の連鎖をくい止め、反転上昇につなげることを国家目標に位置づけねばならない」「手綱を緩めれば私たちの世代は次世代、次々世代から恨みを買う」「国や自治体、企業経営者、家庭や地域社会が総力戦で立ち向かうときだ」
何なんだろうか、この事大主義は。読者数が減る新聞社にとっては死活問題なのかもしれないが、明らかに煽り過ぎの文体に強い違和感を抱くのは僕だけでないはず。
そもそも少子化と国力を直結させるこの発想こそが、個人に犠牲を強いることで結果として少子化を進行させているのだが、経済成長至上主義の編集部に洗脳されてしまっているのか、大林尚という記者は、そのことに気付いているふしはない。
何が問題かといって少子化が絶対悪であるかのような、バランスを欠いた議論だろう。いやがおうでも出生率を反転させなければならないという強迫神経症のような論調のことだ。
社会のレベルでの危機感をあおればあおるほど、個人は考えにゆとりを失って生活防衛に走り、少子化はさらに進む。マスメディアとしてとるべき効果的なスタンスは、むしろ少子化の利点を取り上げることではないか。
少子化対策をよびかけなければならいのは、主に都市部の二十代、三十代だが、少子化によって都市部の過密が緩和されるとか、地方の過疎化が進むことでムダな道路やハコモノに税金が浪費されずにすむとか、少子化のメリットを訴求すればいい。そうやって世の中に対する悲観的な考え方をとりのぞき、子供を産もうと思える希望を抱かせることこそ正しい少子化対策なのである。
ところが最近の日本のマスコミは、米国型の危機感ばかりをあおる報道姿勢にすっかり感化されてしまって、少子化問題についても、まるでこのままいくと日本中が不幸のどん底におちいるかのように書き立てる。そんな不幸な将来へ誰が子供を送り出そうと思うだろうか。
日本経済新聞の記事は少子化を解決しようとして、まったく逆の効果を生み出している。この皮肉な結果から、今のマスコミの根っこにある問題、事大主義と煽動というスタイルが浮き彫りになる。

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  1. Transition

    少子化(未婚化)の利点

     今回は、少子化(←厳密には異なるが、ここでは、単純化するために、未婚化も同時に生じるものとする)の利点を挙げていく。