舞城王太郎『阿修羅ガール』

■三島由紀夫賞を受賞した舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫)を読んだ。高橋源一郎センセイ絶賛の現代小説家だが、確かに現実と幻想の間を自由に往還するスピード感のある文体と、乾いた暴力描写はクセになりそうだ。
この文庫版に初収録された短編『川を泳いで渡る蛇』は、意外と言ってはなんだが、『阿修羅ガール』と同じ京王線沿線の調布を舞台にしながら、主人公の何と言うことのない日常生活の中の哲学的考察が展開される、まるで芥川賞作家が書いたみたいな私小説的佳作だ。メフィスト賞作家ならではのB級ハチャメチャ展開小説を期待している初期からのファンは、こんな短編を読まされると「難しくてダメ」となってしまうのではないかと危惧するのは余計なお世話だろう。ただ、「グルグル魔人」についての最後の謎解きと愛子の倫理的考察は、作品として完結させようという「とってつけた」感が強い。
そう、『阿修羅ガール』だけなのかもしれないが、これだけ乾いた暴力描写がありながら、主人公はとてもまっとうな倫理観をもっている設定になっているのだ。もしかするとこの倫理性こそ舞城作品の芯となっている魅力なのかもしれない。とにかく舞城作品はもう一冊は読んでみようと思う。