リクルートエイブリック編集『転職徒然草』

リクルートエイブリック編集『転職徒然草』(新潮文庫)を読んだ。人材紹介業者である同社があつかった個々の転職事例をコンパクトにまとめたエッセーが数十収録されている。主旨が簡潔に表現されたタイトル、冒頭の要約部分、教訓的な締めくくりという紋切り型で整理されたエッセーには、いかにもリクルートっぽい一貫した編集方針がうかがえ、とても読みやすい。まえがきにもあるように、この本は転職を成功させるためのノウハウ本ではなく、悲喜こもごもの転職群像である。
僕自身、人より多く転職を経験している立場として共感をもって面白く読めたのだが、一つ問題があるとすれば、失敗例の比率が少なすぎることだ。先日読んだ畑村洋太郎『失敗学のすすめ』(講談社文庫)ではないが、人間は失敗例からこそ本質的な教訓を得ることができる。
もちろん失敗例を紹介することでリクルートエイブリックの転職エージェントとしての社会的評価に傷がつくということもあるが、転職を考える人にとって、転職経験者の「こんなはずではなかった」という転職事例こそもっとも参考になる失敗事例のはずだ。
また一般的には転職イコール、キャリアアップという上昇的転職観が当たり前のようになっているが、より快適な職場環境を目指すとか、仕事以外の生きがいを追求するために転職するなどといった、「水平的」転職も人生の一つの選択肢であることが、もっと社会的に広く認知されるべきだろう。
いってみればネガティブな動機による転職であっても、まずまずの転職先が見つかれば人生OKなのである。年収アップやキャリアアップがすべて、といった転職支援の考え方では、転職エージェントのビジネスの幅は広がらないだろう。

リクルートエイブリック編集『転職徒然草』」への0件のフィードバック

  1. 日刊カタログ

    「エッセー」でブログ検索してみました。

    「 エッセー 」の検索結果で、「愛と苦悩の日記 .. 」さんを紹介させていただきました。つながり系サイトです。