ベテラン社員の文書化・標準化軽視

■科学的プロジェクト管理が日本企業の情報システム開発になかなか根付かないのは、ベテラン社員が標準的なプロジェクト管理業務に慣れすぎてしまい、そこからはみ出した事態に対処することにしか仕事としてのやりがいがを見出せなくなっているからではないか。
日本企業の中間管理職は仕事を複雑化し、自分にしかできない仕事に変えていくことで自己保身している。そのためプロジェクト管理においても、日程遅れや要件定義の甘さなどといった問題が、まるでこれから必ず起こるかのように想定し、当たり前の管理手順をちゃんと踏むことを後回しにして、起こるかもしれない問題に対処することを優先してしまう誤りを犯している。
ベテラン社員たちは標準的な手順をきちっと踏むことをバカにし、必ずしも起こるとは限らない問題に先回りして対処することこそが、まるで中間管理職としての存在意義であり、経験の活かしどころだと勘違いしているのだ。社内の規程類を整備する当事者である中間管理職の彼らが、規程類を軽視することに自らの存在意義を見出しているような状況では、科学的プロジェクト管理手法のような体系的な方法論が根付かないのはむしろ当然である。
ベテラン社員は若手社員のマニュアル至上主義を批判する前に、まずマニュアルこそ最低限の業務品質と業務効率を保つ唯一の手段であることを思い出すべきだ。業務を文書化・標準化すること自体が悪なのではない。業務を文書化・標準化することで初めて、業務のうち文書化・標準化できない部分が明らかになる。逆に言えば、業務のうち標準的な部分が、文書化されてきっちり伝承されないような職場で、それよりもさらに高度な業務、つまり、文書化・標準化することが難しい業務がきっちり伝承されるわけがない。
ベテラン社員は即興演奏的な仕事のスタイルこそが、ベテランたるゆえんであるという勘違いをしているために、若手社員への正確な業務ノウハウの伝承に失敗している。

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