矢野絢子『浅き夢』

■『浅き夢』というのは2005/04/13に発売された矢野絢子の新しいコンセプトミニアルバムで、近所のTOWER RECORDSにてろっと立ち寄って偶然見つけた。
毎晩『ナイルの一滴』を聴かない日はないという生活になり、このメジャーデビューアルバムについては、ほぼ全曲コードをとってギターで弾き語りできるまでに至っていたので、当然二枚目のアルバムを待っていた。CDショップで気づくとは不覚だったし、この@niftyのココログに彼女が期間限定のblogを開設していることに気づかなかったのも不覚だった。
日本的叙情性がほぼ高知でしか活動しないという彼女の個性であることは確かなのだが、レコード会社のマーケティングなのか「美しき日本の憧憬を綴る」というコンセプトが行き過ぎで、和太鼓を取り入れた祭囃子風の『風の子』、三味線と彼女のピアノが競演する『とうとやつめ』の二曲についてはあざとさが否定できない。それ以外の5曲は、インストゥルメンタルの『空色ふう子』を含めて申し分なく、1曲目『かくれんぼ』は「もういいかい」という呼びかけに対する「もういいよ」という答えが実は深い「赦し」の意味を秘めていたのだということを気づかせてくれる、彼女らしい世界観が体現されたバラードだし、最後7曲目の『燐光』も力強いボーカルにふさわしいスケールの大きさを感じさせる彼女の王道と言える作品だ。『ナイルの一滴』での物語性の強い三拍子の大作『ニーナ』に対応するのが、本作ではやはり三拍子で演奏時間も長めの『水之月』、とぼけたメロディと単純な歌詞ながら希望と絶望の入り混じった『ゾウリムシ』は前作の『ひとさじ』や『レモンスライスほおばって』の流れにある。
椅子、水の中などのモチーフは前作からしっかりと引き継がれている。マスメディアや首都圏ではあまりお目にかかれないことは残念だけれど、矢野絢子にはいつまでもこのまま歌い続けてほしいし、その変わらなさが今の邦楽界での彼女の稀有な位置なのだろう。