阿部和重『シンセミア』

■一昨年の出版時から早く読まなければと思いつつ、近所の市民図書館の蔵書が貸出中のままになっていたりで読まずにいた、毎日出版文化賞・伊藤整文学賞受賞の長編小説、阿部和重『シンセミア』上・下巻をようやく読了した。数十人の登場人物が織りなす腐臭を放つ濃密な憎悪関係が、登場人物の内面に踏み込みながらも飽くまで冷徹であり続ける文体で窒息しそうなほど緻密に描かれる。あまりに醜悪で中毒になりそうな物語。純文学でしか描けない世界を描いているという意味で現代文学の極北であることには違いない。