むしろ単調なコード進行

■今日の未明、たまたま目が覚めてトイレに行って帰ってきて布団にまたもぐりこんで、いつものように両耳にイアホンをねじこんでAMラジオをつけ、寝入ろうとすると、ちょうどTBSラジオの深夜番組で矢野絢子のコーナーが始まった。矢野絢子のアルバムを聴こうと思ったのは、この深夜番組の終わり近くのコーナーで、彼女が地元の高知で愛犬を散歩させながら録音機に向かって一人ごちた内容が放送されており、その中の一つのエピソードがとても「文学的」で印象に残っていたからなのだが、まったく意識せずに、たまたま目が覚めた時間にまた同じ番組を聴けたのは偶然にしては出来すぎている。先日、どうしても自分で12分の大曲『ニーナ』を歌いたくなって、MP3にエンコードした曲を繰り返し聴きながらギターで和音をとってみると、見事にハ長調でベースが一つずつ下がっていく、C→G7onB→Am→ConG→F→G7→C→G7という典型的なコード進行になっている。彼女の公式ホームページによると、どうやら難しい楽譜は読めないということのようで、『ナイルの一滴』の他の曲も調べてみた。『てろてろ』C、『夕闇』C、『ゼンマイ仕掛け』Am、『嘘つきの最期』Em、『わかれ』Am、『ニーナ』C、『ひとさじ』Em、『レモンスライス』F、『ソリダスター』F、『闇の現』Em、『かなしみと呼ばれる人生の優しさよ』C、『坊や』A、『ナイルの一滴』Em。13曲中、シャープ、フラットがないハ長調・イ短調が6曲。一つしかシャープ、フラットがつかないホ短調・ヘ長調が6曲。シャープが二つだけつくイ長調が1曲という結果になった。予想通りほとんど黒鍵をたたかずにすむ曲ばかりだ。『てろてろ』も『夕闇』もベースラインは『ニーナ』と殆ど同じで、拍子こそ違えコード進行のバリエーションは限定される。それでも一曲一曲の個性が粒立って単調さを感じさせないのは、詞の強烈な叙情性・情念と声の力だろう。しばらく『ナイルの一滴』を聴き続けることになるだろう。