市川準『トニー滝谷』

■村上春樹原作、市川準監督『トニー滝谷』(2004年)を観た。たった75分間のほぼ全編、カメラが右へ水平移動しながらの場面転換、映像による描写を抑制する代わりに淡々とした西島秀俊のナレーション。その映像は色彩も抑えられ、坂本龍一の静かなピアノ曲とともに、まさに様式美だけで成立しているようなストイックな映画で、個人的には宮沢りえが他界した妻の洋服を試着するシーンなど、固定ショットのままもっと長回しでもいい。
トニー滝谷が妻を失ってからのワンシーン、ワンシーンはもっと長いカットでもいい。たった75分間で終わってしまうのが本当に惜しい映画で、これほどあっさりした中篇映画になってしまっていることが残念な佳作。ちなみに、最後のクレジットでキャストのところに「猫田直」の名前を見つけたのだが、どこに出演していたのか気づかなかった。女子更衣室で宮沢りえに話しかけていた同僚OLの役立ったかもしれない。