利重剛『BeRLiN』

■昨日に引き続き利重剛監督・脚本の『BeRLiN』(1995年)を観た。107分の長編。正直、脚本の出来は『エレファントソング』の方がいい。主人公の「キョウコ(仮名)」の人物像がさまざまな人の証言であぶり出され、そのうち数人が消息を絶った彼女の捜索に日常生活を犠牲にしてまでのめり込んでいく。その過程で脚本の必然的な流れとして、中谷美紀演じる主役が一種の「天使」として理想化されてしまう。にもかかわらず結末は永瀬正敏と中谷美紀の二人の狭い世界に収束するのだから、さんざん伏線を引いておいて謎解きのつまらないミステリーみたいなものだ。
このアンチクライマックスの脚本を映画として観られる作品にしているのは、紛れもなく監督としての利重剛の才能だ。キャストの中ではダンカンと山田辰夫の演技が明らかに力不足だが、それでも佳作になっているのはやはり監督の才能だ。『エレファントソング』の松田美由紀の号泣は文字どおり森にこだまする「エレファントソング」として必然性はあるが(ネタバレさせないためにあえてよく分からない表現にしておく)、本作で中谷美紀にPTSDとおぼしき発作の演技をさせるのは、「キョウコ(仮名)」の根本的な弱さの提示で彼女の「天使」性を強化することにしかならない。彼女の精神異常はその前の自傷癖の描写で十分すぎるほど伝わっている。
このように脚本が空回りしている点がとても残念な作品だ。あまりに残念なので『クロエ』(2001年)も観てみることにしたい。(ちなみに昨日の日記で利重剛氏の姓名の区切りが「り・じゅうごう」となっていたのは「りじゅう・ごう」の誤りだったことをお詫びするとともに、ご指摘頂いた読者の方に感謝いたします)