利重剛『エレファントソング』

■狭い世界のついでながら利重剛(りじゅう・ごう)監督・脚本『エレファントソング』(1994年)を観た。60分の中編。1995年ベルリン国際映画祭ベスト・アジア映画賞受賞作。最近僕が観た映画とのつながりは説明不要だろう。DVD版には偶然にも『この窓は君のもの』を撮影し終えたばかりの古厩智之が監督した約12分のメイキングが収録されている。本作もプロデュースが仙頭武則だからか知らないが、本当に世界は狭い。プロの撮影現場を初めて経験する古厩監督自身の初々しいナレーション付きだ。
このメイキングを観て分かったのだが、手持ちと思ったカメラは実はロープで宙吊りにされていた。フレームが観客の潜在意識に与える影響は観客自身が思うより大きく、ロープで吊るされているのか、人間がかついでいるのか、ステディカムなのか、完全に固定されているのかでカットの印象はまったく変わる。一貫して固定カメラの作品に手持ちのカットが入ると、それは誰かの見た目ということに自動的になってしまう。映画の規則の面白いところだ。そんなことはどうでもいいのだが、メイキングで利重剛監督は「浮遊感覚」を出すのためにロープで吊るしたと語っている(正確には古厩監督のナレーションがそう引用している)。
救いを与えてくれた人の死にどう報いるかという重いテーマが、そのカメラの「浮遊感覚」と、素朴な脚本と、主演の松田美由紀のおかげで軽やかな感動を残すドラマになっている。利重剛の他の作品も観たいと思った。