学校の怪談『怪猫伝説』

■ホラーやスプラッター映画は苦手なのでほとんど観たことがないのだが、『ONE PIECE 秋コレクション』に収録されている『猫田さん』という作品が、『学校の怪談 物の怪スペシャル』で矢口監督自身によって『怪猫伝説』というタイトルでリメイクされていると知って、この部分を観るためだけにVHSビデオを借りてみた。
『猫田さん』の主演は、この作品の人間になったネコ役に入れ込んだあまり相川直から改名した女優・猫田直で、『怪猫伝説』では深津絵里が演じている。『ONE PIECE』での固定カメラ、ノーカット、同時録音ではなく、普通にカット割りのある短編になっている。深津絵里と猫田直、どちらかよりネコ役にはまっているかと言えば無論、猫田直だろう。
『怪猫伝説』でも猫田直はネコを飼っている男子大学生の同級生のチョイ役で登場しているが、『猫田さん』で猫舌という設定の猫田直が、生姜湯を冷まそうと手のひらであおぐ仕草と言い、しゃべり方と言い、『怪猫伝説』の深津絵里のカラッとした演技よりも動物的だ。猫田直はそういうしゃべり方しかできないので、ネコ役にはまるのは当然と言えば当然で、『猫田さん』は『裸足のピクニック』同様、女優との幸福な出逢いで作品の完成度が高まっていると言える。
『怪猫伝説』はワンシーン、ワンカットでない分、飼い主の男子大学生の手元のクローズアップなど、ややくどいカットもあるが、大学の廊下で深津絵里がニワトリと大騒ぎするシーンのジャンピングカットや、自転車の荷台に飛び乗るシーン、ラストでいざ男子大学生が深津絵里に思いを告白しようという場面が、自転車をこぎ去る後姿のロングショットでカットになるところなど、矢口監督らしい演出が楽しめる作品になっている。
深夜に及ぶ手術の終わったネコと手をとりながら眠る深津絵里の横顔のショットは、『アドレナリンドライブ』でラーメンを作っている間に眠ってしまう石田ひかりの横顔のショットを想起させた。静かに眠る少女の横顔のショットは矢口作品の特権的な一瞬を構成しているのかもしれない。ちなみに『ONE PIECE 秋コレクション』の最後には鈴木卓爾監督の独特の世界が広がる16mmの短編カルトムービー『おっけっ毛 ビビロボス』も収録されている。