矢口史靖『ひみつの花園』

■これで矢口史靖監督・脚本作品をすべて観たことになる。一昨日の日記にも書いたように最寄のTSUTAYAにはなかったので、会社からウチに帰る途中の駅にあるTSUTAYAをさがして、見つけた『ひみつの花園』(1997年)を借りた。
強烈なお金大好きキャラを演じる主演の西田尚美は、最近フジテレビのドラマ『白い巨塔』で法廷で真実を証言する看護婦役で見たばかりだ。本作で日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞している。最終的にこの主人公の女と同棲する大学の助手役の利重剛は脚本家・小山内美江子の長男で、故・鷺沢萠と結婚していたこともあるらしい。
矢口作品では常連の「引越しのサカイ」のおじさん徳井優と田中要次(『スウィングガールズ』でパチンコ屋の店主)、おそろしく太っていた頃の伊集院光、ちょい役で濱田マリ、という具合に、決してマイナーな俳優ばかりが出演している映画ではないということが分かるのだが、DVDがなくてVHSビデオで観たこの作品は、つい7年前の映画とは思えないほどKODAKフイルムの発色が悪く、監督が意図的に安っぽい張りぼて人形やプラモデルを使った「特撮」をしていることもあってまるで1960年代の映画のようだった。オリジナルがモノラル録音であることも、そう思わせた一因かもしれない。
最近の作品に比べると、人物に寄ったスチルショットが特に前半でやたらと多く、背景までセットを作りこむ予算がなかったのではないか。アフレコがされていない無音のシーンも目立つ。ちょっと信じられないくらい大胆な省略法も、どちらかと言えば予算があればきっちり撮りたかった絵が撮れないことが原因の、脚本上の苦肉の処理という面が強いのではないだろうか。
この作品が鈴木卓爾との共同脚本になっているから、最近の矢口作品にはないかっとび感があるのだという説もあるが、予算制約説の方が本当なのではないかと思う。省略しすぎじゃないかというシーケンスと、ここは省略してもいいだろうというシーケンスのバラつきが、個人的にはかなり目についた。
たった2年後に撮られた『アドレナリン・ドライブ』と比べても、編集のバランス感覚は雲泥の差がある。それをB級スラップスティックの魅力が失われたと感じるのか、矢口監督が本来撮りたかったものが撮れる予算を確保できるようになったと見るのか。僕は矢口監督の才能がだんだんと発揮されるようになってきていると見たいのだが。