「夢」を語る未熟な「レジャー産業」

■仕事の関係で『月刊レジャー産業』(綜合ユニコム)という月刊誌の2004/07号を読むことがあったのだが、店舗改装による集客力向上が特集になっており、スポーツクラブ業界向けの某コンサルティング会社の代表取締役がこんなことを書いていた。
「M&Aは短期間で企業成長できるというメリットがある半面、急ぎすぎて業績が悪化したり、この事業に対する夢や希望が、利益を追求する会社による資本の論理につぶされてしまうといったデメリットもあり、メリットだけを得られるかどうかが明暗の差を生むのだろう」(p.38~39)。
国内ではM&Aによって急成長しているスポーツクラブ運営企業があるが、企業規模が大きくなっても好業績につながらない事例もあるという文脈で書かれている。しかし「夢や希望」が「資本の論理につぶされてしまう」というのは、あまりにも素朴すぎる考え方ではないだろうか。
夢や希望だけでビジネスが成り立つならそんなに素晴らしいことはないが、会社を運営していくためには資金を拠出してくれる株主の存在が不可欠であり、資金があるからこそ夢や希望を追いかけることができるのだ。M&Aの後に業績改善に失敗したとすれば、それは何も資本の論理が社員の夢や希望をつぶしたからではなく、単純に採算度外視の放漫な経営をしたツケが回っただけのことではないか。
この代表取締役は自分がオーナーであるコンサルティング会社の経営者でもあるので、所有と経営が分離している経営環境に馴染みがないのだろう。一般的な上場企業では所有と経営の分離など当たり前の環境なのだが、その厳しさに馴染みがないせいで、こんな未熟な物言いになってしまうに違いない。彼の言葉が『月刊レジャー産業』のような業界紙で専門家の意見として通ってしまうこと自体、この産業が未熟であり、経営の観点から改善の余地が大いにあることをはっきりと示している。
一度トヨタ出身のコンサルタントに店舗オペレーションの効率化でもお願いしてみたらどうだろうか。おそらくムダはたくさんあるはずだ。休憩時間でもないのに従業員が楽しくおしゃべりしているのを「現場の士気を高めるために必要な息抜きの時間だ」と言い張るなら、そもそもトヨタ式のカイゼン以前の問題ということになるが。