河合香織『セックスボランティア』

■日本経済新聞に書評が掲載されたいたノンフィクション、河合香織著『セックスボランティア』(新潮社)を購入して早速読み終えた。ノンフィクションとしては無難に読ませる文体と構成になっており、特に批判すべき点は見つからない。

主題は障害者の性。驚いたのは、オランダでは障害者に対する性的な公的なサービスとして行われているという点。ただ利用者は少ないようで、実際には必ずしも問題の解決につながっていないそうだ。先日このサイトで紹介したマンソンジュ氏の著作(そろそろそんな著作は実在しないのだということを書いておいた方がいいのかもしれないが)にもあったように、性は脱構築の最後の残滓だが、記号としての身体を扱う身体論は、障害者の身体も論じ残していたのではないか。
著者の河合氏は本書を通じて性の問題を心の問題(障害者の孤独感)とくりかえし結び付けているが、もしかするとそれ以前に、純粋に障害者の身体にとっての、身体的な(物理的な)性行為のあり方を徹底して論じるべきだったのではないかという疑問は残る。
なぜなら、性の問題を心の問題に結びつけたが最後、健常者と障害者の性に目だった差異はなくなってしまうからだ。両者のもっとも顕著な差異は、言うまでもなく身体のすがたである。性について健常者と障害者の連続性を強調するのはかなり危険だが、そうしなければこの本が大手出版社から出版されることはなかっただろうということも事実で、確かに困難な問題である。