中井久夫『治療文化論』・フリス『自閉症の謎を解き明かす』

■中井久夫著『治療文化論』読了。精神科医にとって治療はそれぞれの患者のための一品料理である、精神科医は傭兵または売春婦のような存在であるなど、独特の職業観が印象的。
ひきつづき精神医学関連書ということで、ウタ・フリス著『自閉症の謎を解き明かす』東京書籍を読み始めた。読み始めた時点で非常に興味深い内容だ。歴史的な文献から自閉症患者とおぼしき人々を取り上げる章で、トリュフォーの映画『野生の少年』の原案として有名な『アヴェロンの野生児』が登場する。
おそらく皆さんのほとんどがこの「野生児」は人間に育てられなかったために、イタール氏の献身的な特殊教育にもかかわらず、ついに標準的な知能レベルに達しなかったと勘違いされているだろう。しかし真実は、自閉症児だったせいで10歳前後で両親に捨てられ、2年後に発見されたというのが真実らしい。
この本ではイタール氏の記録から読み取れる症状から、著者がそのことを論証している。19世紀当時は啓蒙主義全盛の時代だったために、人間らしい教育を受けなかったから「野生児」になった、という説明が受け入れられてしまった。現代に住む僕らでさえ、この説明にあっさり納得してしまうのだから、依然として僕らは啓蒙主義の強い影響下にあると言ってよい。
歴史上「野生児」と呼ばれた人々の多くは、自閉症や精神分裂病の患者であり、脳の先天的な器質的異常から、健常者と同じような社交的生活を送れないために、両親に遺棄され、結果として「野生児」と呼ばれるような境遇に陥ったとのことだ。なるほどそう考えると、トリュフォーの映画でも原案に忠実に描かれているように、ついに少年が社交性を獲得しなかったことも理解できる。

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