『治療文化論―精神医学的再構築の試み』『時間の比較社会学』

■あまり読みたい本が見付からないので、とりあえず精神医学ものつながりで中井久夫著『治療文化論―精神医学的再構築の試み』(岩波現代文庫)を読んでいる。まだ最後まで読んでいないので結論は見えていないが、西洋医学の精神病・神経症の分類は西洋文化に依存したものであって、他の文化圏にはそれぞれ異なる精神病・神経症のとらえ方・分類方法があるという主旨のようだ。
例えば西洋のホモセクシュアル・パニックに対置される東洋のインセスト・パニックという小田晋氏の説。西洋人の男性の中には、自分が同性愛的な関係が起こりそうな状況に置かれると精神的なパニック症状を起こす人がいるが、異性の肉親との近親相姦的な関係が起こりそうな状況に置かれても平気で、日本人はその逆である、という説だ。初めて聞く考え方だが、精神病・神経症の発症にも文化的差異というのはありそうな話だ。やはり精神病理学の本は社会科学の本として興味深く読める。
ちなみに並行して真木悠介著『時間の比較社会学』(岩波現代文庫)を十年ぶりくらいに読み直しているのだが、こんな本だっただろうかと、以前読んだ記憶が完全になくなっている。見田宗介教授の講義は学生時代直接受けたことがあるが(このことは以前の「愛と苦悩の日記」にも書いたような気がする)、あまりに膨大な構想のごく一部分であると前置きされた講義に面食らったような覚えがある。西洋の直線的な時間観念の相対化は、欧米ビジネスパーソンの「計画」癖を相対化するためにも必要なことだ。