帰宅電車は狂気から正気へ戻るための時間

■家へ帰る電車の中での90分は狂気から正気に戻る為の時間だ。決して医学的に厳密な意味ではなく現実から乖離した思考に基づいて仕事をする誇大妄想狂に近い状態を此処では比喩的に「狂気」と言っているだけなのだが、そのような意味で常軌を逸している空気で仕事をし続ける為にはこちらも狂気を装う必要がある。幸い僕は90分間だけ電車に揺られて都心から遠く離れた郊外の自宅に帰り着くと完全に正気に戻れる環境がある。人は常軌を逸すれば逸するほど自分が合理的だと頑固に主張するようになるが、僕自身は少なくとも自分が普通の会社員でない自覚がある。幸いにもいかに自分が普通でないかを比較するための、言語の上で互いに理解可能な日本人という他者が周囲に無数に存在するからだ。ただし精神病と診断されない程度の誇大妄想の保有者が偶然日本人でないために第一線で高度な能力を発揮して活躍する場面は望んでもそう容易に鑑賞できない名場面として人々の記憶に刻まれるだろう。