山下格『精神医学ハンドブック』

■最近の自分の日記やエッセー(英語のものも含む)を読むと、一体こいつは何様のつもりだと思わずにいられないが、まあそんなことはいいとしてメラニー・クラインついでに精神医学について浅く広く知識を仕入れるために山下格著『精神医学ハンドブック』(日本評論社)という本を購入して読んでみた。
フロイトを読むと診断として様々な病名が登場するため、実際にどんな病気なのかを知らなければ理解しにくいこともある。フロイトの時代と現代とでは診断方法がかなり異なるようだが、何の知識もないよりはましだろう。大型書店で類書をいろいろ立ち読みしてこの本を選んだのは、知りたかったことの一つ、心因(社会・心理的刺激)、内因(遺伝体質)、器質因(脳の損傷など物理的な原因)の分類になっていたためだ。
浅田彰の『逃走論』のせいで僕は今までずっとスキゾフレニアとパラノイアが反対語だとばかり思いこんでいたが、これが完全な誤解だと初めて知った。前者は「統合失調症」で後者は妄想性の症状を指す。現に統合失調症の中では「妄想型統合失調症(paranoid schizophrenia)」が最も多いらしい。この二つの言葉を知っているほとんどの人が、スキゾフレニアを多重人格障害、パラノイアを強迫神経症と取り違えているんじゃないかと思う。
「精神分裂病(統合失調症の古い名前)」と言うくらいだから、人格がバラバラに分裂しているんだろうとか、「偏執狂」と言うくらいだから、一つのことにこだわってそこから離れられないんだろうという連想だ。この種のことに正確な知識をもって何の役に立つわけでもないが、間違った知識を正すことは何歳でも遅すぎることはない。何の役にも立たないと書いたが、いつか日曜日に乗った電車で延々と独り言で悪態を吐きつづけていた中年女性は、統合失調症で対話形式の幻聴に苦しんでいたのではないかと思い当たった。