日経新聞興膳宏氏コラムの偏見

■今日の日本経済新聞朝刊文化面に京都国立博物館長・興膳宏(こうぜんひろし)という人物が次のような文章を書いている。
「電車の中は、さながら不作法のデパートだ。シルバーシートにふんぞり返る若者、大きな荷物をそばに置いて二人分の座席を占拠している人、これらはいわば古典的な不作法である。最近では、それに加えてアベックのいちゃつき、ドアの前に立ったまま(時には座りこんだまま)動こうとしない高校生、携帯電話であたりかまわず話す人」。
ここから人を示す言葉だけを抜き出してみると、興膳宏氏の見方がかなり偏っていることが分かる。「若者」「人」「アベック」「高校生」「人」、年齢層が特定できる表現はすべて若者を意味しており、「人」と表現されている部分では年齢が分からなくなっている。
しかし電車の中で「不作法」な行動に及ぶ人間で、数の上で圧倒的に多いのは中高年層の会社員である。携帯電話の利用(僕は個人的に電車の中で携帯電話を使うのが不作法だとはまったく思わないが、この興膳宏という人物の定義を採用すればの話である)も、周囲に迷惑のかかる音声通話は圧倒的に中高年の会社員だし、座席に大股を広げてふんぞりかえっているのもほとんどが中高年の会社員、夜遅い電車で大声を上げて騒ぐ酔っ払いもほとんどが中高年の会社員、混雑した車内で通路のど真ん中に立ちふさがっているのもほとんどが中高年の会社員、満員電車の中で人の移動を意地になって妨害するのも体格のでかい中年の会社員、猥雑なスポーツ新聞を全開にして読みふけるのも中高年の会社員、朝の通勤電車で大いびきをかいているのも中高年の会社員、朝っぱらからニンニクやポマードの異様な臭気を醸し出しているのも中高年の会社員、そして、興膳宏氏も含め、そうした自分の醜く不作法な姿にまったく自覚がないのも中高年の皆さんなのである。
昭和57年から京都大学文学部教授をつとめ、平成10年には文学部長、平成12年には名誉教授、平成13年には独立行政法人国立博物館理事に就任した人物が、自分の年代の大人たちの「不作法」を棚にあげて、「若者」や「高校生」や若い「アベック」にこれほどまでに不寛容であるのだから、日本の若者が将来を悲観するのも当たり前である。興膳宏氏は全国紙にこのような若者に対する偏見にあふれた記事を書くことを恥じるがよい。