カフカ『変身』をドイツ語で読む

■ドイツ語の勉強としてカフカ『変身』をドイツ語で最後まで読んでみた。一字一句正確に意味をとりながらではなく、どうしても引っかかる単語だけ意味を調べつつ、原文をそっくりそのままタイピングして書き写すという方法で読んだ。
つまり僕が入力したMS-Word形式の『変身』のドイツ語テキストが僕の手元にあるということだが、グーテンベルク・プロジェクトにすでに『変身』のオンライン・テキストは存在するので、みなさんにはお勧めできない無駄な努力である。しかしキーボードで入力しながらじっくり読んでみると、事務的な文体でありながらもこんなに切ないお話だっただろうかという発見があった。
保坂和志と小島信夫の往復書簡集『小説修業』で保坂和志が「甲虫」に変身した主人公のザムザと書いたところ、小島信夫が『変身』には単に「害虫」とあるだけで「甲虫」とはどこにも書いていないと指摘し、保坂氏も間違いを認めているのだが、じつは『変身』の中にはザムザが変身したものが甲虫であることを示す単語がある。何とかという昆虫の名前が具体的に出てくるのだが、ちょっと今は日本語訳が手元にないので探せない。
ところでカフカ作品を、Amazon.deで取り寄せた独英対訳現代ドイツ語短編小説アンソロジーに収録されている作品と読み比べると、カフカのドイツ語は僕のドイツ語力でも読みやすい部類の、過剰な装飾のない簡潔な文体であることがよくわかる。アンソロジーの作品集の方は1ページ読むだけでも相当骨が折れる。