藤枝静男『田紳有楽』

藤枝静男『田紳有楽』(講談社文芸文庫)を読んだ。なんとも読後感想の書きにくい小説だが、主な登場人物が「茶碗」だと書けばその理由の一端は想像してもらえるだろうか。
さまざまな出自をもつ茶碗が交代で一人称で語り、人間へと自在に姿を変えながら、水脈を伝って日本中をかけめぐる小説である。実際にこの小説を読んでいない人には何のことだがさっぱりわからないと思うのだが、小説というスタイルの可能性の広さを痛感させられる作品。