保坂和志『プレーンソング』

■保坂和志『プレーンソング』を読んだ。彼の小説を読むのは初めてなので、デビュー作をまず読もうと考えたのだが、とくに事件らしい事件は起こらず、登場人物の生い立ちなどの背景も説明されず、回想の場面もなく、あえて言えばこの小説全体が語り手の回想なのだが、語り手が語っている時点からいったいどれくらい昔の話なのかについての説明もなく、その頃が現在の語り手にとっていったいどんな意味を持つのかについての説明もなく、誰かが生まれるわけでも死ぬわけでもなく、僕が個人的に考えている「零度」の小説に非常に近いという意味で高橋源一郎が氏の小説に惚れこんでいるのが納得できた。いま一方で読み進めている埴谷雄高『死霊』の息抜きに読んでみたが、まったく対照的といえば対照的な小説だ。