主力選手を手放すダイエーの愚行

■高橋和巳の『わが解体』はすでに読み終えているのだが(河出文庫では『死者の視野にあるもの』『内ゲバの論理はこえられるか』も収録されているが、さすがに『内ゲバ』はあまりに僕にとって現実感がなくて最後まで読めなかった。樺美智子その他にふれた『死者』の方はまだ読むことはできたが)、もしかすると大学を運営する立場の人々は、あの大学紛争にもかかわらず、というよりも大学紛争がうやむやのうちにい終結してしまったからこそ、自分たちの世界とそれ以外の世界の違いについて考えずに現在まできてしまっているのではないか。
紛争は大学を運営する立場の人々が、外部との多様な意思疎通のやり方を学習する絶好の機会だったかもしれないのだが、その機会は高橋和巳のような特定の個人の苦悩に転じてしまい、大学は無傷のまま、外部に汚染されないまま、純粋なままで終わってしまったのかもしれない。
■昨夜、妙な夢を見た。フランス人だかアメリカ人だかの男性と住宅街を歩きながら、「右とは何か?左とは何か?」ということについて英語で議論する夢だ。随分早足で歩きながらの議論だった。「右」や「左」という言葉をつけて使うことのできる名詞は何か、そこから「右」と「左」ということは何かを考えようと議論していた。その途中で僕はふと思いつき、「『神様』について、『神様の右』や『神様の左』とは言えない。なぜなら『神様』には大きさがないからだ」と話した。そこから、「右」や「左」などの方向が意味を持つのは、有限な大きさをもつものについてだけであることがわかった。夢の中でまでこんな抽象的な議論を、本気でやっている自分にあきれた。
■僕は野球にほとんど興味がないので、このページでも野球にふれることはないのだが、経営の観点から気になることがあったので、ちょっと。ここまで書けばすでにおわかりのとおり、今たいへん話題になっている主力選手の巨人への無償トレードのことだ。
主力選手を無償でトレードするなどということは、野球界ではありえないことのようで、中内正オーナーが純粋に人件費削減のためにいわば「指名解雇」したと解釈されても仕方ない。オーナーは他の選手の反発を招き、事態の収拾に努力しているが、いまのところ相手にされていないという。
ダイエーは先日の中間決算で再建目標を達成できず、福岡三事業と呼ばれるホテル、ドーム球場、球団のうち、ホテルと球場を米国の投資会社に売却することを発表している。逆に言えばダイエーにとって球団は金の卵を産むガチョウだった。しかしその球団の経済的な価値を完全に失わせるような愚行に、中内オーナーは出たということになる。
球団の経営状況を改善するためには、いちばん給料の高い人間を解雇するのが効率がいいのは誰が考えても分かるが、球団の無形資産の価値が何によって、誰のおかげで高められているのかについて、オーナーはまったく理解していなかったことになる。この主力選手がトレードを承諾した背景には、オーナー代行との確執もあったようだが、それでも無償トレードを最終的に決定するのはオーナーである。
これではせっかく手元に残した球団事業というガチョウを、ダイエーがみずから絞めてしまったようなものだ。ダイエー経営陣のおそまつさが、今回の無償トレード問題にはっきりと現れている。...なんていう記事がそのうち日本経済新聞に掲載されるのではないかと予想しているのだが。