宮武外骨『明治奇聞』

■先日神保町に出かけたときの収穫3冊のうち未読だった最後の1冊、宮武外骨『明治奇聞』(河出文庫)を読み終えた。
本書の序文で編者の吉野孝雄氏が背景を説明している。「震災による大火災で、貴重な文化遺産が失われたことに危機感をもった文化人たちは、それらの文化遺産を後世に伝えるにはどうしたらよいかを真剣に考えはじめていた。こうした機運のなかで生まれたのが(中略)外骨たちにより大正十三年に創始された明治文化研究会であった」。この流れで外骨が発行した『明治奇聞』『奇態流行史』『明治史料』『明治演説史』『震災画報』からの抜粋によってこの文庫本は編まれている。
外骨らしい際物エピソードが満載だが、それでも『震災画報』の抜粋部分からは被害の甚大さが生々しく想像できてシリアスだ。本書でしばらく笑いが止まらなかった「奇聞」をひとつ引用したい。
「大正5年七月の末に、東京市外千駄ヶ谷辺のある家に生まれた子供は、毎晩一定の時が来ると、四十ばかりの女の声で「去年の今夜を覚えているか」と恨めしそうに叫ぶので、親たちは気味悪がって、その子供に二千円の金を付けて、他家へやったが、もらった家でも毎晩『去年の今夜』を叫ばれるのが畏ろしく、その子供ともらった金を返してくるので、またほかへやると同じく返してくる。その子供には生まれながら上下に歯が生えそろっている、などいう妄説が行われて、それが二、三の新聞紙上にも出たので、評判になったが、その子供よりは金をもらいたい連中が、わざわざ千駄ヶ谷辺を尋ね回ってもその家が判からない、あるいは下渋谷の八幡前だというので、そこへ行ってみても同じく要領を得なかったそうな、など一時俗間に言いはやされたが、それをアテ込んだ小冊本ができ、また見世物にも仕組まれたそうである。」

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  1. 竜田山

    明治奇聞

    明治奇聞
    河出文庫の表紙が新しくなったのは、
    元々集めていた人にとって嘆かわしいことですが、
    これがきっかけで、以前本屋で見つからなかった本が出てくると嬉しいですね。
    この本もそんな本の一つです。
    以前滑稽漫画館を見て
    宮武外骨という人に興味を持ちました。
    この人は本当に凄い!
    明治・大正時代に政治家や金持ち、
    社会、若者への批判を自らの雑誌「滑稽新聞」や「スコブル」で繰り返し、
    筆禍29回、入獄4回に渡るも
    決してめげずにエネルギッシュに活動した人です。
    すばらしい反骨…