深沢七郎『楢山節考』

■深沢七郎『楢山節考』(新潮文庫)を読んだ。表題作と『月のアペニン山』を読んだだけで、『東京のプリンスたち』は未読。しかし残念ながらどこが名作なのかまったく分からなかった。
今ごろになって深沢七郎を読んだのは中条省平の『小説の解剖学』で「無手勝流(注:むてかつりゅう・戦わずして勝つこと)の名人芸」と評されていたためだが、どこが名人芸なのかさっぱり分からない。廣津柳浪の『残菊』は面白がるくせに、学生時代に読んだフローベールもわからなかったし、やはり僕には文学の素養がないのだろう。
文学の素養を育てるには、子どもの頃に漫画ばかり読んでいたのではダメなのだ。小学生時代の僕はアレクサンドル・デュマの『厳窟王』など子供向けの抄録を嫌々読まされる一方で、『銀河鉄道999』や『サーキットの狼』なんていう下らない漫画にうつつをぬかしていたものだから、30を過ぎて深沢七郎を味わうことさえできないのだ。これはまったく不幸なことである。