四方田犬彦『月島物語』

■四方田犬彦『月島物語』(集英社文庫)を読んだ。近所の古本屋で見つけた本だ。斎藤緑雨賞という文学賞を受賞したらしいが、四方田氏の名前と、月島の地名がミスマッチだったので思わず手にとってしまった。ちなみに斎藤緑雨は何度も読みかけては諦めている作家の一人だ。Webサイト『青空文庫』で一作品だけ読めるのでご一読頂きたいが、完全な擬古文は読み進むのに骨が折れる。
『月島物語』はもちろん現代文、というより、雑多な文体の交錯する超・現代文。いやみのない衒学趣味と伏線がちりばめられて非常に面白く読めるエッセー集だ。埋め立てられてまだ100年の月島が、なぜ下町の代表のように言われるのか。つい先日、初めて地下鉄有楽町線・月島駅で降りると、なるほど僕が幼年時代を過ごした大阪市生野区を思い出させる長屋が残っていた。月島といえばもんじゃ焼きの連想しか持てない方には、ぜひともお勧めのエッセーだ。月島の歴史を通じて、東京という都市そのものの本質も垣間見られる。