「オレ、いままではいい女でなきゃダメだと思ってたんだけど

■「オレ、いままではいい女でなきゃダメだと思ってたんだけど、最近、ブスの優しさもわかるようになってきたんだよなぁ。大人になったなぁって思うよ」「わかる、わかる。オレもそうなんだよ」「そうそう」。読者の皆さんは僕が実際に耳にしたこの会話がどこでおこなわれたとお思いだろうか。電車の中で耳にした男子高校生3人の会話ではない。実は社員食堂で耳にした若手男性社員3人の会話なのである。しかも彼らは自嘲気味に語っているのでもなければ、額を寄せて小声で語っているのでもない。誰に聞こえても構わない、むしろ聞こえていて欲しいというような声量で、「クールに」語っているのである。僕は生まれてこの方かくも内容の無い会話を友人と交わした経験がない。二十歳を過ぎても「いい女」と「ブス」の二元論から脱出できてないこの精神の未熟さ加減は、いったい何が原因なのだろうか。僕はすぐそばで昼食をとりながら思わず吹き出しそうになった。こんなことを昼食時に大まじめで話し合っている二十歳過ぎのサラリーマン3人など、喜劇以外の何ものでもない。しかし考え直せば、彼らは同じ会社の社員なのだ。僕は一転して暗澹たる気分になった。これほど分別に欠けた若手社員に会社の未来を託さなければならない経営者が哀れにさえ思えた。つまりこれは喜劇ではなく、悲劇の始まりなのだ。